2019年12月号 Vol.55 No.9
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(3)一球入力データシステムプロ野球には試合中一球速報のサービスがあります。四国アイランドリーグplusでもこれをやりたいと考えました。プロ野球ではヤフーが一球速報をやっていますが、ヤフーはデータスタジアムという会社からプラットフォームを利用させてもらい、対価を払っています。B to Bの世界です。しかし、これは結構カネがかかります。このデータ分析の仕組みをB to Cの世界に広げることができたら、マーケットは大きく拡大するのではないでしょうか。例えば、少年野球や草野球の試合で一球速報が楽しめたら、とてもうれしいのではないでしょうか。プラットフォーム利用にはコストがかかる。それならば、自前で作ってしまおうと考えました。そこで、中国人の技術者を呼んできて一球入力のデータ分析の新規事業を立ち上げました。ポイントは、コストをプロフィットに変えるべく思い切って投資する決断ができるかどうかです。チマチマとコスト削減をやるようでは四国に未来はないのです。すでにWEBで四国アイランドリーグplusの一球速報を配信しています。他の野球関係者にも「こんな面白いシスステムを作ったので使いませんか。」と勧誘した結果、1年で閲覧ユーザーが370万人超となっています。先日5,000万ビューを達成しました。(4)アカデミー事業アカデミー事業については、これを全部自分でやろうとするのは無理です。人手が足りません。そこで、既にこういったことをやっているところと一緒にやっていくことにしました。日本で4万5千人の子供を対象にスポーツスクール事業をやっているリーフラス(Leifras)という企業とスクールパートナー契約を締結して野球スクールを開校しました。リーフラスは「技術よりもスポーツから学べることがいっぱいある。」というスタンスで、勤勉性や意欲、忍耐力、思いやりなどといった非認知能力を育む教育で定評があります。システム構築のような場合は、一から自分で立ち上げて、B to Cの世界でビジネスを展開していきますが、スクール事業とかグッズ販売などの場合は、すでに確立しているものを持つ社と提携した方が効率は良いのです。こうしたいろいろなパートナーシップの組み合わせを工夫していくことで、経済的なインパクトを生み出していくことができるのだと思います。8. 地方創生とゼネラルマネージャーの役割本日は、増田大輝選手の話からパートナーシップまでいろいろとお話ししました。徐々に地域課題というところに話が向かってきました。私たちには地域課題を解決する使命があります。しかし、その使命を達成するには様々な課題があります。その最たるものは、スポーツ界における現場とフロントのトレードオフの関係(相反する関係)です。現場は当然勝ちたいのでカネがかかることしか言いません。フロントはできるだけカネがかからないようにしたい、また儲けるために選手に試合以外のところで協力を求める。でも選手は試合に集中したい。トレードオフの関係は難しいのですが、逆に言うと醍醐味があります。現場サイドとフロントサイドの間に入って、バランスをとる、これがゼネラルマネージャーの役割です。経営サイドの意識も現場のことも両方分かっていなければならない。その中でうまく差配してマネジメントしていくことがゼネラルマネージャーには求められるのです。日本全体で見ると、地方創生で一番大事なのは、このゼネラルマネージャーですが、この存在がいないのです。本来、ゼネラルマネージャー的な役割が国の役割であり、自治体の役割なのだと思います。9.おわりに地域社会にリソースがないわけではないのです。リソースはあるのです。75点から80点くらいの合格点のものが散在しているのです。鳴門のうずしおだけなら高速道路から眺めれば十分だし、祖谷のかずら橋を渡るためだけにあんな山奥には行かないのです。しかし、温泉があり、金毘羅さんがある。これなら成り立つのです。54 ファイナンス 2019 Dec.連載セミナー

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