2019年12月号 Vol.55 No.9
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どうやったら地域にリアルに参画できるかというところを目指していかなければいけない。そのために様々な関係先とのパートナーシップの戦略を考えています。6.パートナーシップ戦略(1)活動経費各球団の事業規模、つまり活動経費は、一番少ない徳島で9千万円、一番多い愛媛でも1億5千万円ぐらいです。Jリーグと異なり、税金で運営費をいただくということもほとんどありません。私たちの活動経費がどこから捻出されているかと言うと、2014年ぐらいまではリーグ全体のオーナーがポケットマネーで出してくれていました。いわゆるタニマチ文化です。日本のスポーツ界にはよくある話です。しかし、このタニマチ文化は、これからの日本で成り立つことは難しいでしょう。全てにおいて自立していくことが求められるのです。では、9千万円から1億5千万円の経費を自力でどうやって捻出するかということになります。(2)スポンサー料四国アイランドリーグplusはいろいろなところにスポンサーになってもらい、スポンサー料をいただきながら運営しています。いずれの球団もスポンサー料がおよそ70%から80%を占めます。スポーツビジネスとしては、本来なら入場料収入の割合を高めていきたいのです。50%以上を入場料収入で賄えていたら、大変すばらしい球団経営です。しかし、私たちはトップリーグではありません。お金を払ってスポーツを観る、という既存の価値観に立つと、私たちが入場料収入を40%、50%にもっていくのは不可能です。そこを目指しても時間の無駄です。よって、スポンサーとのパートナーシップの内容をどうするかという話になります。リーグの立ち上げ当初は、スポンサーの側にも期待感があります。ユニフォームの胸のところに自社の名前が出る、外野の横断幕に自社の名前が出る、これだけで数千万円が動きました。しかし、それは3年で終わりました。外野の横断幕に名前が出る、ということだけではもはやスポンサーからお金はもらえません。なぜなら観客が1試合500人から600人程度しかいないからです。一万人以上観客を集めて、初めて横断幕のような広告宣伝が形になるのです。観客数が1試合500人から600人程度であっても、名だたるナショナル企業がスポンサー料を出したくなるようなところを突いていくのです。(3)ローカル商社私は東京に営業に来ても、野球の話はほとんどしません。巨人や阪神と同じ土俵に上げられたくないからです。私は弁護士ですから、負ける土俵では絶対に戦いません。絶対勝てるところに論点を移すのです。私は、「四国アイランドリーグplusは野球のリーグだと思っていますよね。でも、それは違いますよ。確かに野球はやっています、こういった素晴らしい選手もいますが、私たちの本当の価値がどこにあるか、実は、私たちはローカル商社です。」と説明しています。私たちは四国で15年地べたを這いずり回ってきました。四国のどこの地域の出身の方よりも、私は四国のことを知っている自信があります。それは政治のことであったり、経済のことであったり、文化のことであったり、それら全ての裏側のことであったり、要するに全てです。私たちは「インフラ」なのです。野球というコンテンツはソフトのくくりですが、実は、人のつながりを作るインフラなのだというのが私の考えです。私たちは、どこどこのおばちゃんから知事まで、みんな知っているという感覚です。この15年かけて培った様々な地域の情報網であったり、人とのコネクションであったり、いろいろな地域の情報であったり、それによって気軽に知事に会いに行くことができたり、ということが私たちの強みなのです。だから「ローカル商社」なのです。地域に網の目のように張ってきたこの関係性が私たちにはあるのです。(4)スポンサー同士の結び付き今年、トリドール、ダスキン、伊藤園、アイリスオーヤマという大企業と新たにパートナーシップ契約を結びました。アイランドリーグとしては11年ぶりの新規大口スポンサーです。52 ファイナンス 2019 Dec.連載セミナー

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