2019年12月号 Vol.55 No.9
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ち得る潜在能力があると思います。トライアウトには毎年200人以上の若者が集まります。これほど誘因力のあるコンテンツがほかにあるでしょうか。「四国4県どこかに派遣されますが、働きに来てください、給料も月10万円から15万円程度です。」という条件で四国の外から若者を引っ張ってくることができる仕事はほかにはないでしょう。私は、この誘因力をどうにかもっと活用できないかと常に考えています。外から四国に来て野球をやって、辞めていく選手たちの中で、そのまま四国に残る若者も大勢います。例えば、群馬から来た選手は、地元四国の人から応援してもらい、この温かみに初めて触れることができました。そして、田舎での生活を初めて体験し、農業に初めて触れました。そして、農業で暮らしてみようかと故郷に帰らずにそのまま四国に残って農業をやっているのです。また、地元のテレビ局の女性と結婚してそのまま四国に残る、子供を持って人口も増やしてくれるという、ありがたい選手もいっぱいいるのです。これが一番多いパターンです。アイランドリーグがなければできなかったであろう関係性がこの15年間で確実に形成されてきているのです。先ほど62人がプロ野球に行ったと申し上げました。それ以外に、アイランドリーグを最後に、野球を諦めて社会人になっていく若者が過去14年間に800人以上います。800人以上の若者が青春の大切な時期の2、3年を四国で過ごして四国と関わりを持ち、少ないとはいえ四国でお金を稼いでいるのです。こういったつながりをもっともっと活用できないかと考えて、いろいろ取り組んできています。4.海外とのつながりインドで少年野球のチームがどれくらいあるかみなさんご存知ですか。北インドだけで少年野球チームが800あります。それぞれに選手が30人ぐらいいるらしいのです。相当な人数になります。日本では野球をやる子供が少なくなり、野球人口が減っていますが、世界に目を向けるとどんどん増えていることが分かります。今年の6月、メジャーリーグがインドに事務所を出しました。しかし、日本は全く動いていません。これは、野球界の話に限ったものではありません。全ての分野において、完全に世界という単位で物事を見られなくなってきています。そのような状況だからこそ、私たちは海外のつながりを意識した取組みを続けたいと思っています。(1)北米遠征この夏、3年ぶり3度目となる北米遠征を行いました。一か月、米マイナーリーグのダブルA(AA)クラス6チームと20試合をするという武者修行の旅です。ダブルAは日本で言うと1軍半程度の強豪です。あの潰れそうだったアイランドリーグが本場の強いチームと対戦していい勝負をするといったように、四国であっても世界とつながっているというのはすごく夢のあることだと思います。(2)東南アジアでの盛り上がり私たちは、野球が盛んな韓国や台湾だけでなく、野球がそれほど盛んではない地域とのつながりも常に持ってきました。この8月にジャカルタで入団テストを行ってまいりました。インドネシアでは野球はやっていないだろうと思われるかもしれませんが、実はやっています。インドネシアに野球のスリランカ代表、フィリピン代表、ブルネイ代表、インドネシア代表の若者が集まりました。アジアには野球に魅力を感じる若者がたくさんいるのです。(3)制限のない外国人選手枠私たちのリーグには外国人選手枠がありません。その結果、ジンバブエ人、ブルキナファソ人、エルサルバトル人など本当に多くの国から野球をしに来ています。彼らからしたら四国が全てです。四国に来て野球をして母国に帰るのです。このことを何かに活かせないか、また、このように眠っているコンテンツはまだまだほかにもあるのではないかと思っています。(4)日本のノウハウ中国では現在、何十個も野球場が建設されています。プロリーグも発足しました。そして何年か前にメジャー50 ファイナンス 2019 Dec.連載セミナー

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