2019年12月号 Vol.55 No.9
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実力は、セ・リーグ、パ・リーグの二軍、三軍と比べると、三軍よりちょっと強いぐらいで、二軍のチームと試合をしたら10試合で4試合勝てるくらいのレベルです。社会人野球で言うなら、常に都市対抗であるとか、日本選手権に出ることができるようなチームよりは少し劣ります。とはいえ、そうした全国大会に出るか出ないかというレベルにはいつも届くぐらいの実力があります。(2)所属選手これまでの14年間で、62人がアイランドリーグからNPBに行っています。アイランドリーグを1つの社会人チームとして捉えると、14年間でこれほど多くのプロ野球選手を輩出しているチームはほとんどありません。また、私たちは選手だけではなく、コーチ、トレーナー、通訳などといったスタッフも大勢NPBに輩出する育成機関だとも言えます。読売巨人軍が今年優勝を決めた試合で10回表の決勝打をセンター前に打った選手は誰でしょうか。そう、四国アイランドリーグplus出身の増田大輝選手です。私が彼と出会ったのは、彼が19歳の時で、今から6年前です。彼は、野球推薦で大学に入学した後、事情があって野球部を辞め、大学も辞めてしまいます。その後、ひっそりと地元の徳島に戻って草野球をやりながら、とび職をしていたのです。私は、とび職の棟梁と飲み友達だった縁で彼と初めて出会いました。彼は、アイランドリーグの徳島インディゴソックスに入り、2年で巨人の育成選手となりました。そこからさらに頑張って4年目の今年4月に初めて一軍に上がり、そして巨人が優勝を決めた試合で決勝打を打ったのです。また、増田大輝選手の前には、ロッテの角中勝也選手が2回パ・リーグで首位打者を取っています。その角中選手も高知ファイティングドッグスの出身です。二人ともアイランドリーグがなければプロ野球の世界には行けなかった若者です。このほかにも、米メジャーリーグで本塁打王を獲得したマニー・ラミレス選手や阪神の藤川球児選手も在籍していました。(3)試合数、観客動員数四国アイランドリーグplusは公式戦を年間160試合開催しています。結構な試合数です。観客動員数は、1試合当たり500人から600人くらいです。直感的にこの観客動員数を多いと思いますか、少ないと思いますか。ほとんどの方は少ないと思いますよね。では、何と比べて少ないとお考えでしょうか。おそらく、阪神で5万人、巨人で4万人の観客と比べて少ないと判断されたと思います。しかし、それは比較対象として適切なのでしょうか。それが地方創生のリアルの一つの典型です。数字の魔力です。1試合当たり500人から600人というのは確かに少ないかもしれませんが、四国の人口、交通機関、スタジアムの施設の質など総合的に判断するとこの観客動員数は悪い数字ではありません。そもそも、私たちはトップリーグではありません。育成のリーグです。アイランドリーグからドラフトで指名されてセ・リーグ、パ・リーグに行くのです。しかもドラフトで指名される確率はだいたい5%ぐらいです。私たちの独立リーグにいる120人の選手の5%ぐらいです。それぐらいしか上に行けない実力のチームで、さらに四国という地で、同じことを飽きもせず年間160回もやっているのです。エンターテインメントで考えてみてください。年に160回も全く同じことをやり続けて、常に500人、600人の人を呼べるコンテンツがほかにあるでしょうか。この四国には絶対ありません。あるとしたらJリーグぐらいでしょう。3. 地域に役立ち得る潜在能力・地域との関係性今、地方の問題は何でしょうか。一言で言うなら少子高齢化です。徳島県では65歳以上の人が40%を超えました。50%超の自治体も出てきている状況です。生産年齢人口がどんどん減り、流出過多がずっと続いています。四国アイランドリーグplusの選手の平均年齢は23歳の若者です。彼らの85%以上が四国の外から来ています。流入です。このような数字には、地域に役立 ファイナンス 2019 Dec.49上級管理セミナー連載セミナー

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