2019年12月号 Vol.55 No.9
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巻頭言スポーツ組織と パブリックセクターの協働って?~「Jリーグをつかおう!」の意図すること~Jリーグ 理事米田 惠美ワールドカップやオリンピックではスポーツ観戦するという一般的な生活をしていた私が、縁あってJリーグの常勤理事として関わるようになり、もうすぐ2年の月日が経とうとしている。随分と変わり者だと周りからは言われるが、自分や出会った人が抱えている問題に向き合い「なぜ世の中はこうならないのだろう?どうしたらこの人は笑顔になるだろう?」という問いを追いかけていたら、結果としてちょっとした変人になってしまった。「なぜ女性は働きにくいのだろう?どうしたら働きやすくなるのだろう?」という単純な疑問が私のキャリアの原点だ。お金の流れがわかれば少しは世の中や組織の構造がわかるだろうと公認会計士を目指した。その後、人間が組織やコミュニティを動かしている以上は「ヒト」の原理を理解しなければならないと心理学を学び、組織開発と人材開発の仕事をしながら、保育や在宅診療所の現場に出て社会課題・地域課題と向き合っていた。そんな私は今、「Jリーグをつかおう!」と題して、社会連携プロジェクト(通称:シャレン!)を推進している。サッカーの競技水準の向上や興行主として事業を成立させることはもちろん大切なことだが、Jリーグは設立当初より、国民の心身の健全な発達への寄与、今時の言葉でいう、“ウェルビーイング”を理念に掲げてきた。その結果、Jリーグのホームタウン活動と呼ばれる地域での活動は、今では年間20,000回を超えるまでに至るようになった。単なるサッカーの普及だけではなく、障がい者の就労移行のきっかけとなるスタジアムでの就労体験、多世代交流、防災、ソーシャルインパクトボンドを活用した介護予防、健康づくり、地域人材育成、まちづくりなど、社会課題にも多く取り組んでいる。とはいえ、それだけの社会的活動を実施している団体であることを、恥ずかしながら、私もJリーグに参画するまで知らなかった。スポーツの力は、自分が思っているより多様だと気づかされるし、企画・運営している人の素敵な想いに触れると、世の中捨てたもんじゃない!と強く思える。こんな活動の数々が全国のクラブを通じて広がったらどれだけ良い世の中になるだろう。「Jリーグの使い方」を理解していただければ、より多くの人と手を取り合って地域の課題を解決していくことが出来るのではないか、そんなことを思うようになった。そこから生まれたのが「シャレン!」である。Jクラブが持つ発信力やコミュニティ形成力、各種のノウハウが強み。社会課題をポジティブに、エンターテイメント性を交えて解決していけるのがスポーツの良さだと感じている。24時間365日「Jリーグをつかって社会をよくするアイデア」を提案できる窓口もオープンした。自治体の職員や官僚との連携も始まりつつある。興味がある方はぜひ覗いてもらえたらと思う。誰もが誰かのサポーターになれる、誰もが1歩を踏み出せる、そんな社会を皆さんと実現出来たら嬉しい限りだ。(C)J.LEAGUEファイナンス 2019 Dec.1財務省広報誌「ファイナンス」はこちらからご覧いただけます。

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