2019年12月号 Vol.55 No.9
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また、開発が成功すれば、すだちだけでなくみかんやゆずといった他の柑橘の殺菌にも転用が見込まれ、他分野への波及効果が期待されるところである。このように、このプロジェクトは単に農産品の輸出拡大だけではなく、農福連携・障がい者雇用のさらなる拡大と、地元大学のLED技術の開発・転用といった、複数の政策を統合運用し、政策の相乗効果を図るところがミソである。7最後に -もう一つの究極の目標上述のように、来年の輸出拡大に向け、様々な手段を講じているところであるが、もう一つ大事なことがある。本プロジェクトの究極の目標と言ってもいい。県内には、すだちはなっているのに、人手不足や高齢化で収穫できずに放棄されているすだちが大量にある(筆者の推測では100トン以上。)。欧州ですだちが晴れて広く認知されれば、こうした「未収穫すだち・放置すだち」を果汁で輸出に回したいと考えている。生果はどうしても検疫のハードルが高いが、果汁はそこまでではない(そして、無農薬でもある)。また、利益率も果汁のほうが生果より高い(ざっと倍くらい)。そして何より、現在活用されていない地域の潜在資源・放置資源を活用することは、原価ゼロで価値を生み出すことであり、いわば「トラッシュ(ごみ)をキャッシュ(お金)に変える」という、最も投資効率の高い事業ともなる。これらがうまくいけば、単なる掛け声や「イベントやりました」「予算取ってきました」「計画策定しました」だけでは終わらない、「実を伴った」地方創生の新たなロールモデルを示すことができると考えている。さて、どういう結果となるか-。結末はまたご報告したいと思う。【著者略歴】平成12年大蔵省(現財務省)入省。理財局総務課・政策調整室長、同財政投融資総括課・企画調整室長、在ベトナム日本大使館一等書記官、国際局為替市場課、金融庁検査局等を経て、平成30年より徳島県庁に出向中。徳島県庁では、保健福祉部長を経て令和元年より現職。英・ケンブリッジ大学大学院修了(国際金融論・通貨危機論)。(写真11)徳島大学ポストLED研究所・永松准教授(左)と筆者40 ファイナンス 2019 Dec.徳島産すだち輸出倍増計画てんまつ記 SPOT

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