2019年12月号 Vol.55 No.9
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乾燥させ、一つ一つ布で拭き、箱詰めして出荷ということになる。なお、当然ながら、上述の2つの手続きは国内に流通の場合は必要はない。また、カンキツかいよう病で見た目が悪くなっていても中のすだちの味には特に大きな影響はない。3人手が足らん!さて、本年の状況であるが、上述の指定圃場は県内に5か所あり、7月の時点で合計2トン程度の収穫が見込まれていた。これだけ見れば去年の輸出量(1トン)から増えるじゃないか、というところだが、一つの問題が発生する。それは「人手不足」である。全国的に人手不足が問題となっているが、農業の現場においては特に深刻である。また、8~9月の時期に各農家が一斉に収穫作業を行うため、いずれの農家も上述の検疫作業や箱詰め作業に割ける人員は少ない。そんな中で輸出量を増やそうというのであるから、取扱業者(輸出業者や地域商社)からは「人手が足りません。このままだと輸出が増やせないかもしれません。何とかなりませんか。」という声が聞こえてきた。折角の輸出拡大のチャンスを人手不足で逃すわけにはいかない。さて、どうする?4「農福連携」のモデルケースへ ~支援学校の実習を組み込むそこで考えたのが、「障がい者の就労の場としての活用」すなわち農福連携である。このすだち輸出の諸作業のうち、次亜塩素酸ナトリウムに浸す作業は重労働であり、また危険を伴うものであるが、すだちを拭いて箱詰めを行うといった工程には大きな危険はない。よってこの作業に障がい者の方にも参加してもらうことした(なお、「先ず隗より始めよ」で筆者も休暇を取って作業に参加した。)。具体的には、作業を行う「徳島県立農林水産総合技術支援センター」(徳島市に隣接する石井町に所在)近くの「国府支援学校」の生徒さん二名に、実習の一環として参加して頂いた(写真8、9)。彼らは一つ一つの作業を大変丁寧、熱心にやってくれ、一緒に作業を行った輸出業者からも評価は非常に高く、来年は実習に参加する人数を倍以上に増やしてほしい、との声も聞かれたところである。5前年の2倍のすだちを確保! →まさかの結果さて、こうして支援学校の生徒さんの協力もあって人手不足の問題もクリアでき、昨年の倍の2トンのすだちを輸出用に持ち込み、本年は「すだち輸出倍増!農福連携の成功事例!」と高らかに謳い上げることを筆者はこの時点で確信していた(写真10)。(写真9) 箱詰め作業を行う支援学校の生徒と視察に訪れた飯泉徳島県知事(写真8) 拭き取り作業を行う支援学校の生徒(写真10) 輸出用のすだち(計2トン)を前に喜ぶ筆者(写真7) 次亜塩素酸ナトリウムの浸漬作業(カゴを持って作業しているのは筆者)38 ファイナンス 2019 Dec.SPOT

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