2019年12月号 Vol.55 No.9
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をもとに公共サービスなどを提供する経済活動のことです。1年間に使うお金を「歳出」、集めたお金を「歳入」といいます。この歳出と歳入のバランスをとるということが、財政にとってはとても大事ですが、今の日本の財政というのは大きな課題を抱えています。令和元年度の国の予算は、歳出総額101.5兆円になっており、歳出の内訳は、社会保障34兆円、地方交付税交付金16兆円、国債費、借金の元利払いは23.5兆円となっていて、これで全体の7割以上を占めています。一方、歳入のほうは、歳出の101兆円に対して、税収で62.5兆円賄っていますが、それ以外の差し引きの部分、つまり不足している部分は、公債金といって借金して賄っています。毎年借金を続けてきた結果、現在の借金の残高は総額897兆円となっており、これは、日本のGDPの約2倍という額に膨れ上がっています。主要先進国G7の国々と比べても、日本は突出して財政状況が悪いといえます。このまま借金を積み重ねていくと、国にお金がないので、将来の公共サービスの支出を減らしていかなければなりません。ギリシャが財政危機に陥ったときは、まさに公共サービスが受けられない、例えば警察等にも給与が払えない、ごみの収集ができないといった問題が起こったことは記憶に新しいと思います。また、国の信用が低下してしまうと、お金を借りるための金利が高くなって、より多くの利息を払わなければいけないので、借金を借金で返すというような悪循環になるということも非常に懸念されています。財政がここまで悪化してしまった主な要因は、高齢化の進展により、社会保障費が増大したことです。30年前は社会保障費11.6兆円であるのに対し、本年度の予算では、社会保障費が34兆円と約3倍に膨れ上がっています。これに対し、公共事業費は30年前からほとんど変わっていません。教育費、文化費、科学技術費、防衛費も同様にほとんど変わっていません。今後、高齢化が進み、1990年には10人に1人が高齢者だったのが、2050年には10人に4人が高齢者となる見込みです。一方、日本の全人口は減り、社会保険料や税金を支払う社会保障制度の主たる「支え手」と2022-20252026-20302031-20402041-20502051-2060全人口▲57万人▲68万人▲82万人▲90万人▲91万人歳以上(後期高齢者)+75万人+22万人▲5万人+18万人▲3万人歳▲107万人▲67万人▲58万人▲93万人▲71万人今後の人口動態の変化(高齢化と支え手の減少)(出所)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成年推計)」(出生中位・死亡中位)総務省「人口推計」◆中長期的な人口の変化(1年間あたり)団塊の世代が後期高齢者になり始める団塊の世代がすべて後期高齢者になる団塊ジュニアが後期高齢者になり始める後期高齢者急増支え手の急減•医療費・介護費に大きな影響を与える後期高齢者数は年まで大幅増加、その後ほぼ横ばいが続き、年ごろから再び増加していくことが見込まれています。•一方で、保険制度の主たる「支え手」となる歳の人口は、今後中長期的に大幅な減少が続き、仮に労働参加率の上昇を想定したとしても、年以降、労働力人口は大幅に減少してくことが見込まれています。30 ファイナンス 2019 Dec.SPOT

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