2019年12月号 Vol.55 No.9
25/84

人口増となる住宅施設も誘致し、総合力を上げることが必要でした。本市の都市計画担当者とは、マーケティングに必要なデータ収集や、道路法や都市公園法といった法律上の制約、事業の進捗状況を毎週確認し、京都市内や大阪、最も遠いところでは埼玉まで、企業を訪問し続けました。厳しい協議が続きましたが、数社の進出が決まり、どのようなエリア開発ができたかは数年後から徐々に現れてきますので、その経済効果に期待しています。(2)観光本市は京都駅から快速21分、各停でも28分という好立地を活かして観光振興を進めており、観光客数は2011年から、観光消費額は2014年から増加を続けています。牽引するのは、湯の花温泉・保津川下り・嵯峨野トロッコ観光列車という三大観光であり、これだけで年間180万人近くの観光入込客数を誇ります。ア.課題の分析と対応裏を返すと、市内全体の観光入込客数が年間300万人弱である中、その6割を三大観光に依存しており、(1)他のコンテンツが弱いことで日帰り客が多く(観光客の95%)、(2)日帰り客の消費単価が低く(平均1600円前後)、(3)トロッコ列車が期間運休し、保津川下りの人気が落ちる1・2月に観光客が激減する、といった課題があります。また、保津川下り乗船客の内訳を見ると、2012年に5%であった訪日観光客が2017年では24%に増え、*11) 亀岡市のほか、岐阜県岐阜市、可児市及び恵那市の3市でも大河ドラマ館がオープン予定であるほか、滋賀県大津市及び京都府福知山市でも歴史展示を中心とするミュージアムが開設予定であるなど、大河ドラマにちなんだ歴史館設置が史上最多の年になります。トロッコ列車乗客の半数以上が訪日観光客となるなど、インバウンド対応の重要性が際立っています。観光振興は、市役所の観光部署だけの仕事ではなく、従来の観光協会や旅行代理店のほか、DMO、湯の花温泉観光旅館協同組合や保津川遊船企業組合といった事業者組合、コト消費を提供する工房など多様な事業者が重層的に活動しています。大都市に比べ公共交通の便が悪いため、車などのアクセスを確保する必要があり、また、個々の広報発信力や資金力にバラつきがあるので、「複数のコンテンツを束ねて周遊できるようにし、面的に発信する」ことが、目指す方向性となります。このように口で唱えるのは簡単ですが、地域の特性を理解し、いろいろな思いや事情を抱えた事業者とのコミュニケーションを重ね、年間観光客5,275万人(うち訪日観光客450万人。2018年実績)を有する京都市の陰に埋没しないよう差別化を図るのは、一筋縄ではできません。それでも、着任から1年2ヶ月後の本年9月に「亀岡アグリツーリズム振興協議会」の発足に立ち会うことができました。森の京都DMOが事務局を務め、地域の顔となる若手事業者や国内外で活躍する地元出身のクリエイターを中心に、およそ40団体が参画し、地域全体の観光振興に向けて交通や宿泊、体験事業の導線をつくり、ブランディングを進める協議会です。京野菜の一大産地という特性を活かし、訪日観光客向けに、農泊や食にまつわる体験、ベジタリアンが楽しめる食事の提供などを商品化し、「100人のファンが100回来たくなる」地域づくりをします。イ.2020年NHK大河ドラマ国内観光客向けの事業も進めています。2020年放送予定の大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公は明智光秀。本市は、明智光秀公が丹波平定の居城とし、本能寺に向け出陣した丹波亀山城の城址を有しており、平成23年から8年間に渡り、大河ドラマ誘致活動を進めてきました。上述の京都スタジアムの一階商業スペースにて、「麒麟がくる 京都大河ドラマ館」が来年1月から翌年1月までオープンする予定です*11。ドラ(写真3:三大観光コンテンツ) ファイナンス 2019 Dec.21地方創生の現場から【第7回】

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る