2019年12月号 Vol.55 No.9
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市場が小さいため、ビジネスが撤退し、生活サービスや雇用の場が減少し、生活がより不便になり、若い住民が離れ、より市場が小さくなる、という負のスパイラルが生じます。(2)人口問題の深堀りさらに言えば、産業面から本市の人口問題を考えるとき、総人口だけでなく、「昼間人口」または「昼夜間人口比率」を考える必要があります。本市は京都市のベッドタウンとして発展してきた結果、全住民の13.6%(12,141人)が京都市に通勤通学しており、日中の人口が少なくなります*4。また、休日においても娯楽や買物などを京都市で行いがちです。それにより、本市の「昼夜間人口比率」は85%となっており、京都府・大阪府・兵庫県・滋賀県の全129の市町村のうち、上から105番目という低い数値です*5。本市の中心であるJR亀岡駅前に降り立った時、多くの方は「飲食店が少ないな」「空き店舗が多いな」と感想を述べます*6。本市の人口規模は京都府で3番目に大きいのですが、巻末に示した「商品販売額」といった経済力は府内他市と比べ小さいとのデータが以上を物語っています。また、「工業製品出荷額」も低位にあり、特徴的な産業がないという弱点があります。2000年をピークに本市の人口が減少してきている中で、こうした経済の弱さが足枷になり、税収減を通じて財政に悪影響をもたらします。日本全体で今後も人口減少が見込まれる中、他自治体から人口を奪うような施策を行っても問題の解決にはなりません。亀岡市は経済的な側面から「地方創生」にチャレンジする必要があります。 地方創生に向けた5つのプロジェクト以上のような背景の下、携わってきた亀岡市の地方創生に向けた取り組みをご紹介します。*4) 出典:内閣府RESAS「まちづくりマップ」(2019年11月17日取得時点)*5) 出典:同上*6) 車社会であるため、本市を貫く国道9号線は全国チェーン店でひしめき合っていますが、地元資本でなく、同じエリアでの再投資を避けるため、売上げが本市の経済活性化につながる効果は薄い状況です。*7) 2019年現在J2の京都サンガF.C.のホームスタジアムとなる予定。国際試合を含めたサッカーのほか、ラグビーやアメフトも開催可能。21,600人収容の球技専用スタジアム。*8) 2015年に5.5兆円であったスポーツ産業の市場規模を2025年までに15兆円に拡大することが目指されています(2019年6月21日「成長戦略フォローアップ」p125)*9) 出典は同上*10) 道路や公園等の公共インフラを整備・改善し、土地の区画を整えることで、エリア全体の利用価値を高める事業。(1)京都スタジアムJR亀岡駅からわずか300mの場所に、府立京都スタジアム*7が竣工します(2020年1月開業予定)。当駅北口を出ると、左に緑深い山々、右に高さ28mのスタジアムがそびえ立つ様子が目に飛び込んできます。「スタジアム・アリーナ改革」-2016年度以降各年度の日本政府の成長戦略において、スポーツの成長産業化*8が掲げられ、具体的な事業の一つに、魅力的で収益性を有するスタジアム・アリーナを2025年までに20拠点設けることが据えられています*9。その成長戦略と軌を一にする事例として、京都府が総工費156億円、本市が用地買収費20億円を投じた建設事業であり、本市ではスタジアム稼働の経済効果を最大化すべく、隣接する亀岡駅前北口エリアについて、土地区画整理事業*10を進めています。私の仕事は土地区画整理事業組合と協働して、当該事業エリアにビジネスを誘致すること。宿泊事業者、不動産開発会社及び飲食事業者など計100社近くに事業打診を行い、渉外を繰り返しました。地域内での資金循環を考えると、地元企業が事業投資し、所得や税収を通じて地元に資金が還元されることが理想ですが、冒頭説明した商圏人口の小ささや駅前不動産をめぐる経済条件を踏まえると、集客できる地域外企業や(写真2:スタジアム上空より撮影 写真提供:京都府)20 ファイナンス 2019 Dec.

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