2019年12月号 Vol.55 No.9
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公表されたコミュニケにおいては、「世界経済の持続的な成長を支えるマクロ経済政策と構造政策を通じて、過度な世界的不均衡を削減するために協働する」、「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済および金融の安定に対して悪影響を与え得ることを認識する」等、日本の主張に沿った記述が引き続き盛り込まれた。また、IMFの資金基盤とガバナンスについて、「第15次クォータ一般見直しにおけるクォータ増資に対する進捗の欠如に留意し、理事会に対して、第15次クォータ一般見直し、及びIMFの資金基盤及びガバナンス改革のパッケージに関する作業の完了、及びできる限り早期に総務会に報告することを求める」「IMFの現状の資金規模の維持を支持し、2016年の2国間融資取極を1年間延長することを歓迎する」「新規融資取極の倍増、及び2020年以降の更なる暫定的2国間融資を考慮することを期待している」といった文言を盛り込むことができた。3世銀・IMF合同開発委員会 (2019年10月19日)今回の開発委員会(注)においては、グローバル・バリュー・チェーンの時代における開発のための貿易、ヒューマン・キャピタル・プロジェクトにかかるアップデート、雇用と経済的変革など、開発をめぐる様々な課題について議論が行われた。(注) 開発をめぐる諸問題について世界銀行・IMFに勧告および報告を行うことを目的として1974年に設立。以降、春・秋の年2回開催。今回は第100回目。日本は、ステートメントにおいて、マルパス総裁のもと、世銀の二大目標である貧困削減と繁栄の共有に向けた取り組みが進んでいることを歓迎するとともに、ゲオルギエヴァ前世銀CEOのIMF専務理事就任を歓迎し、世銀・IMFの協力関係の深化への期待を述べた。また、本年6月のG20大阪サミットで得られた開発戦略の議論に資する成果の実践に向け、世銀と緊密に協力していく旨を表明した。このうち、質の高いインフラ投資に関しては、G20大阪サミットで承認された「質の高いインフラ投資に関するG20原則」の実践に向けて、(1)日本・世銀防災共同プログラムや世銀・東京開発ラーニングセンター(TDLC)とも協働し、質の高いインフラに関する日本の知見の共有を図るとともに、(2)インフラ投資計画と債務持続可能性の整合性確保などを支援するIMFのインフラ・ガバナンス・ファシリティへの貢献や、民間資金を活用したインフラ案件の組成を支援するGIF(Global Infrastructure Facility)への追加拠出を行う用意がある旨を表明した。国際保健については、母子保健分野への資金リソースの拡充を目的とした世銀GFF(Global Financing Facility)への追加貢献や、持続的な保健財政制度の構築・保健人材の育成等に焦点を当てて、日本信託基金(PHRD)を通じた更なる支援を行っていく旨を表明した。また、パンデミックの発生に備えた予防(prevention)・備え(preparedness)の強化に向け、日本が立上げを主導したPEF(Pandemic Emergency Financing Facility)の保険機能がより効果的に発揮されるよう、後続フェーズの立上げに向けた検討が進められることへの期待を示した。低所得国の債務持続可能性に関しては、債務国・官民双方の債権者の三者による協働の重要性を指摘しつつ、世銀・IMF双方に対し、債務国への能力構築支援を強化すると共に、持続可能な貸付慣行の定着に向けた取組を後押しすることなどを求めた。自然災害に対する強靭性の強化に関しては、自然災害保険の活用の重要性を指摘した上で、東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF)がラオス・ミャンマー向け自然災害保険を開始することを紹介すると共に、その他ASEAN諸国や他地域への拡大に向け、日本も協力していく考えを示した。加えて、本年12月の妥結に向けて交渉中のIDA第19次増資に関して、質の高いインフラ、UHCファイナンス、パンデミック、債務持続可能性といった重要な課題への対応に期待を表明すると共に、日本として、引き続き、相応の貢献をする旨を表明した。このほか、昨春合意されたIBRD・IFCの増資パッケージは、より貧しい国への優先的な資金配分や民間資金の積極的動員を図るもので、着実な実行が重要であることを強調しつつ、IBRDに続き、IFC総務会決議が一刻も早く採択されることへの期待を表明した。4出張者小話冒頭に記載したとおり、今回の会合は日本議長下で行われる最後のG20であった。日本が議長としてこ12 ファイナンス 2019 Dec.SPOT

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