2019年12月号 Vol.55 No.9
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2019年10月17日から19日にかけて、アメリカ・ワシントンD.C.にて、G20財務大臣・中央銀行総裁会議、国際通貨金融委員会(IMFC)、世銀・IMF合同開発委員会(DC)等の国際会議が開催された。以下、本稿では、G20、国際通貨金融委員会および世銀・IMF合同開発委員会に関して議論の概要を紹介したい。1G20財務大臣・中央銀行総裁会議(2019年10月17日~18日)今回のG20は、日本議長下で行われる最後のG20財務大臣・中央銀行総裁会議であった。この会合においては、世界経済に加えて、6月のG20福岡以降に特に大きな進展のみられる国際租税及び新たな問題として注目を集めるグローバル・ステーブルコインを主な議題として議論を行った。まず、世界経済については、米中の貿易をめぐる緊張の激化、英国の「合意なき離脱」の見通しなど、世界経済が直面する様々な下振れリスクは増大しているものの、来年に向け緩やかに回復が続くという見解を各国と共有した。また、麻生大臣からは、自身が2008年に初めてのG20サミットに参加した経験も紹介しながら、国際協調の重要性を改めて強調するとともに、この1年間、日本もG20を再活性化し更なる国際協調に努めてきたこと、今後も、世界経済の強固で持続可能な成長のため、G20が一致団結して取り組む必要があり、日本も貢献を続けていきたいという発言があった。また、世界経済について議論する中で、日本経済についても、麻生大臣より、少子化問題を克服しつつ高齢化社会への対応を見据えた持続可能な社会保障制度を確保していくために、需要変動を乗り越える十二分の財政措置を講じつつ、今年10月に消費税率の8%から10%への引上げを実施した旨をG20各国に説明した。これに対し、各国から異論は見られなかった。世界経済以外では、国際租税およびグローバル・ステーブルコインを中心に議論を行い、議論の成果として、それぞれについてG20プレスリリースを作成し公表することができた。このプレスリリースは、国際的な作業や議論の進捗をG20として確認し、G20として合意した考え方や今後の方針を対外的に公表するという位置づけのものである(後ろに全文を掲載しており、比較的短い文章であることから、是非一読いただければ幸いである)。国際租税については、経済の電子化の進展により、現行の国際課税ルール(「物理的拠点なければ課税なし」等)では適切な法人課税を行えない場合が拡大してきており、この問題について、2015年10月以後OECDを中心にルール見直しの議論等が進められている。G20は、6月の大阪サミットにて「作業計画」を承認するなど、OECDにおける議論を政治的に後押ししてきた。今回の国際租税に関するG20プレスリリースにおいても、OECD事務局による「統合的アプローチ」(物理的拠点の有無によらず、シンプルな算定式により市場国に課税権を配分するルール)の提案など、最近の進捗を歓迎するとともに、2020年末までに解決策を取りまとめることが重要との認識をG20で共有できた。グローバル・ステーブルコインについては、G7等における議論も念頭に置きつつ、今回のG20において、G20として初めて本格的に議論を行った。グローバル・ステーブルコインに関するプレスリリースにおいては、金融技術革新による潜在的な便益を認識しつつも、グローバル・ステーブルコインや類似の取組が、政策及び規制上の一連のリスクを生じさせること、そのようなリスクは、こうしたプロジェクトのサービスIMF・世銀年次総会および G20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要(2019年10月17日~19日、於:アメリカ・ワシントンD.C.)国際局国際機構課長 緒方 健太郎/国際局開発機関課長 米山 泰揚10 ファイナンス 2019 Dec.SPOT

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