2019年11月号 Vol.55 No.8
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自治体とシェア事業者との 連携で地方を活性化シェアリングエコノミーでは、民間の経済活動を活発にするだけでなく、公共の遊休資産の有効活用や観光資源の開発など、自治体が抱える課題の解決も期待されている。シェアリングエコノミー推進プログラムにおいては、「自治体とシェア事業者の連携実証等」「シェアリングエコノミー導入自治体の事例集の作成・共有」「シェアリングエコノミー伝道師の派遣」を行うなどの後押しも盛り込まれている。その一環として、内閣官房シェアリングエコノミー促進室は平成30年3月、地域における社会課題の解決や経済の活性化を行うために自治体や民間事業者等がシェアリングエコノミーを活用している37の事例を取りまとめ、「シェア・ニッポン100 ~未来へつなぐ地域の活力~」を公開した。平成31年3月に改訂を行い、39事例を追加し合計76事例となった(図表5)。また、内閣官房では豊富な知見や活用の実績等を備える者を「シェアリングエコノミー伝道師」として11名を任命。シェアリングエコノミーを一つの主要な手段として推進し、地域内外の関係者間の仲介役となり、超少子高齢社会における課題に対応する。さらに、業界での取り組みとしては(一社)シェアリングエコノミー協会がシェアリングエコノミーを活用し地域課題解決に取り組む都市(「シェアリングシティ」)を平成29年11月に15自治体、平成30年12月に1自治体を認定した。(1)協会会員企業のシェアサービスを2つ以上導入していること、(2)導入したシェアサービスの普及促進に向けた自治体主導による広報PRを実行していること、が認定条件になっている。消費者が安心して利用できる 「信用スコア」の推進もシェアリングエコノミーのサービスを消費者が安心して利用するには、取引当事者間の信頼の確保が重要となる。一つの方法として海外では「信用スコア」の利用を進める動きがある。従来のように金銭の支払い能力のみならず、年齢、学歴、消費傾向など多様な信用状況をスコア化するサービスだ。国内でも金融やECサービス等の分野でこれに類似した信用スコアサービスを企画・実証する事業者が現れてきており、今後、普及が進む可能性がある。図表5 シェアリングエコノミー活用事例集CabinetSecretariat平成31年3月22日内閣官房シェアリングエコノミー促進室シェアリングエコノミー活用事例集(平成30年度版)シェア・ニッポン100~未来へつなぐ地域の活力~需要緩和導入前の状況(課題)課題に対する取組導入後の状況(取組の効果)シェア・ニッポン100~未来へつなぐ地域の活力~シェアリングエコノミー活用事例集(平成30年度版)22青森県弘前市における取組取組主体:弘前市遊休資産と雪かたづけのニーズをマッチングし、地域共助の活性化により間口除雪の課題解決を図る。•冬期間の間口除雪への対応が課題(背景として、道路の機械除雪で発生する寄せ雪は、各家庭で処理するのが原則)•核家族や単身世帯の増加に伴う地域コミュニティの脆弱により、地域の共助精神が希薄化↓•雪かたづけができない除雪弱者が発生し、雪処理の苦情増加※高齢者・障がい者等を対象とした福祉ボランティア制度はあるが、ニーズに対し担い手が少なく、対応しきれていない。•機械除雪による間口への寄せ雪をゼロにすることは難しい中で、これまで市で進めてきた多様な雪対策にプラスして遊休資産(空地・小型除雪機・人材など)をうまく活用して雪かたづけのニーズとマッチングすることで、地域の共助活性化につなげられないかと考える。↓•機械除雪を実施した日の翌朝に一律500円で間口の寄せ雪をかたづけるため、雪寄せ依頼者と実施者をマッチングするサービスをモデル地区において試験導入【2019年1月21日~2月15日】(2018年度は人材のシェアのみ検討)•モデル地区において6件マッチング導入前・・・除雪ボランティアが2週間に1回除雪→導入後・・・道路除雪が実施されたら、その都度除雪除雪回数が増えたことにより、間口の往来が楽だと好評をいただいている。•地域の資産を有効に活用し、住民同士の助け合いを支援することで雪対策の課題軽減が期待できる。4↑道路の機械除雪状況←機械除雪による間口への寄せ雪マッチングシステム→実験後のヒアリング⇒https://cio.go.jp/share-nippon-100_H30出典:内閣官房図表6  シェアリング領域での「信用スコア」の活用イメージ7シェアリング領域での活⽤イメージA⽒のスコアB⽒のスコアシェアリング等の事業者相互の信⽤担保、利⽤促進等安⼼して借りられる安⼼して貸せる出典:シェアリングエコノミー検討会議第2次報告書 ファイナンス 2019 Nov.5シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への対応で国税庁の果たす役割特集

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