2019年11月号 Vol.55 No.8
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ニケーションなくしては人間を輝かせることはできない。知識を与えることは、e-ラーニングでいくらでもできます。それでも学校は必要です。それは社会性の涵養のためであり、コミュニケーション能力を身に付ける上で、学校の役割は大きいのです。松下幸之助さんは「ダイヤモンドの原石」と言っているわけですが、中国の古典である「詩経」「大学」の中では「切磋琢磨」と言います。「切」はのこぎりで切る、「磋」はやすりで研ぐ、「琢」はのみでうがって形を整える、「磨」は最後に微粒子で仕上げ磨きをしてつるつるにする。これによって宝玉本来の輝きを引き出し、博物館に陳列できるような宝物へと仕上げていく、これが切磋琢磨という言葉のもとの意味です。ぜひ、皆さんの組織には、上から下まで切磋琢磨し合って、輝いていくという未来をつくっていただきたいなと思います。7.グッドニュースの循環をマスコミはバッドニュースばかりを取り上げます。だからこそ、組織にいる人はグッドニュースの循環を図ったほうが良いのです。そのほうが確実に職場は明るくなる。モチベーションも上がる。でも日本人は謙譲の美徳があるから、「僕こんなに頑張りました、褒めてください。」と言えません。だから、誰かがヒーロー・インタビューして、「お前頑張ったな、どんなふうにしたわけ、ああそうなのか。」と言って吸い上げて、それをミーティングなどで紹介してあげると、グッドニュースが循環し、同時にベストプラクティスの共有が進みます。学習する組織というのは、ビジョンが共有され、一人一人が学び、そしてチームが学び、これまでの先入観、固定観念を克服し、部分最適ではなくて常に全体最適を目指していくのです。学習する組織、学習する地球社会(Learning Planet)になっていくためにも、グッドニュースの循環とベストプラクティスの共有が必要です。そのネタを取材するためにも、ぜひヒーロー・インタビューをやっていただきたいと思います。8.ほめ活かし、ほめ育ての3か条ほめ活かし、ほめ育ての3か条というものがあります。「事実をほめる」「タイミングよくほめる」「心をこめてほめる」の3つです。ここでは「事実をほめる」に焦点を当てます。事実でないことをほめようとするのは、「おだてる、ほめ殺し」と言います。ほめ殺すと、「この上司は僕の機嫌を取ろうと思って、心にもないことを言っているな。」と思う。だから、本当のこと(=事実)をほめる。特に細かい進歩、細かい長所、細かいところを見逃さずにほめてもらえると、「この上司はちゃんと僕のことを見ていてくれる、ああ見守っていてくれる存在なのだ。」という、そういう気持ちが伝わるのです。ただ観察力をネガティブに発揮してはいけません。特に優秀な人ほど自分を基準にして部下の至らない点にどうしても認識がいってしまいます。ではどうしたらいいのでしょうか。「美点凝視」という言葉もあるとおり、この人の良いところはどこか、この人の輝きはどこかと探すことで、そこで初めて良いところが見えてくるのです。9.効果的な叱り方「怒る」のは感情的な反応で大体現状の否定、人格の否定になります。これに対して「叱る」というのは理性的な対応で、「然るべきビジョンを示す、引き出す」ことになります。お母さんが子供を「叱る」つもりが、ついつい「怒る」になってしまう。「なんでそんなことをしたの。」と詰問してしまうことがよくありますが、子供のいたずらに合理的理由はありません。では、どうしたらいいのでしょうか。こんな時は、子供の目の高さに視線を合わせるのです。ちょっと間を置いて「○○ちゃん、こういうことしちゃいけなかったの、分かっているわよね。じゃあ今度からどうするの。はい、じゃあ今度からはそうしようね。」と子供に話しかけ、最後はにっこりと、あなたは無条件に愛されているのよ、ということを伝えると効果的です。仕事上の学びはいろいろとありますが、親としての ファイナンス 2019 Nov.73夏季職員トップセミナー 連載セミナー

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