2019年11月号 Vol.55 No.8
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「頷き」「繰り返し」です。ヒーロー・インタビューらしく、盛り上がるように、盛り上げるようにやっていただきたい。ヒーローの方は、どんなことでも結構です。人生の中でのヒーロー体験、充実感、成功体験を感じたときのことをなるべく具体的に細かく映像的に気持ちよく話す。あのときは頑張った、うれしかった、一生懸命やったぞ、そのときの情景光景を思い出して、気持ちよくお話していただきたい。それではいきましょう。***はい、そこまでです。これは結構元気が出ますよね。逆に組織の中で上司が部下に対して「君、元気出したまえ。」と言っても、これで元気が出た人は見たことありません。命令文で相手の状況を変えることには限界があります。「そのことをやろう」という自発性を引き出さないと、行動変容は実現しないのです。ぜひ日常においても、ヒーロー・インタビューをやってみてください。これは簡単で、そんなに時間も掛かりません。歩きながら、階段を一緒に上りながら、ご飯食べながら、そういうインフォーマルなコミュニケーションの機会を増やしてくことが私は本当に大事だと思います。今のヒーロー・インタビューを通じて、パートナー、相方との何か心理的な距離がぐっと近づいた、親しみとか親近感が増したという方は多いと思います。世の中、コミュニケーションで悩んでいる人は大勢います。大人も子供もです。学校教育の中に、コミュニケーションという科目はありませんが、人間関係の成立はコミュニケーションによるのです。しかし、一口にコミュニケーションといっても、表面的な事務連絡や業務連絡をいくらやったところで人間関係は構築されません。人間関係をつくっていくのは心と心の通い合うコミュニケーションなのです。英語にすると、Heart to Heart、これが人間関係をつくっていくコミュニケーションだと思います。一般に組織の中のコミュニケーションはPosition to Positionです。これは対立構造になりがちです。対立構造をちょっと脇に置いて、どれだけ心がつながるコミュニケーションを取れるのか、社会を良くしていくのはこの点に尽きるとすら思っています。ですから、Position to Positionのコミュニケーションは必要ですけれども、それを補って、生かしていくのはHeart to Heartの部分だと思います。その一番簡単な入り口の部分がヒーロー・インタビューだと思うので、ぜひ実践していただきたいと思います。6. 人間は磨けば光るダイヤモンドの原石私はこのエクササイズをペアインタビューではなくてヒーロー・インタビューと呼んでいます。それは「全ての人が一人の例外もなく、いつかその人なりにヒーローになる可能性を持っているから」です。早咲きの人もいれば、遅咲きの人もいる。全ての人がいつかその人なりにヒーローになる可能性を持っている、これを引き出していくのがコーチングだと思うのです。このことを、我が師匠、松下幸之助さんは「人間は磨けば光るダイヤモンドの原石のようなもの」と言っていたわけです。ダイヤの原石というのも、ちょっと見たところでは普通の石ころとそんなに変わりません。「何だ、こいつはダメなやつだな。」と思うと、やっぱりダメで終わってしまう。いや、そうではなくて、ピグマリオン効果と言って、この人はダイヤモンドの原石なのだと思って期待をする。そして、磨きをかけていくと、その内側からダイヤモンドの輝き、ブリリアントカットのきらめきを引き出すことができる。この部下は使えないなと内心思うことがあるかもしれませんが、大間違いです。確実に輝かせることができる。ただし、磨かないと輝かないわけです。自然界ではこれまで人類が発見した鉱物の中ではダイヤモンドが一番硬い、したがってダイヤモンドの宝石はダイヤモンドの粉で研磨します。もし人間がダイヤモンドの原石であるとするならば、そこに磨きをかけ、その内側からその人らしい輝きを引き出すことができるのは、やはりほかのダイヤモンドなのです。他の人とのFace to Face、Heart to Heartのコミュ72 ファイナンス 2019 Nov.連載セミナー

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