2019年11月号 Vol.55 No.8
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能なのだ、できるのだ」というところを見せつけたい、認めてほしい、というものだとアラン・ピーズは述べています。(3)有能性の基準19世紀までの有能性の規準は戦闘能力でした。戦の場で武勲武功をあげる強い侍、強い武将が優秀だと評価されたのです。それが20世紀では、正解がある問題に解答する能力が有能性の基準となりました。試験の成績が良い子が学校で「できる子」と言われました。ただし、これは今の世の中、確実にAIに取って代わられます。これは間違いありません。AIがセンター試験で満点を取るのも時間の問題でしょう。そうすると、21世紀の有能性は次のとおりだと言えます。一つ目は、ゼロから1を生み出していく創造力。AIは何かアレンジすることはできるけれども、全くのオリジナルを生み出すことはできない。二つ目は、人間関係を構築し、深める力です。ペッパー君(感情認識ヒューマノイドロボット)は「きょうは元気ですか。」と気の利いたことを言います。しかし、人間関係を結べるのは人間だけです。三つ目は、初期条件なしに感動して発見する力です。AIは「これを見つけてこい」と命令されると、膨大なビッグデータの中から、すごいスピードで検索をしてきます。しかし、「これを見つけてこい」という最初の初期条件を設定しなければ動けません。一方、人間は何の初期条件を与えなくても、これは面白い、かわいい、すてき、きれい、うまいなどと感動して発見できます。ここが非常に重要な点です。20世紀は左脳重視の社会で、そうした教育が行われていました。これはAIが得意な世界です。しかし、私は、左脳が優秀な人は、右脳も意識すればちゃんと鍛えていくことができます。だから、財務省には、21世紀型の能力に切り替えていくという、この日本社会の未来に向けての先陣を切っていただきたいなと思います。(4)基本は「相づち」「頷き」「繰り返し」「傾聴力」で大事なのは何でしょうか。それは、「相づち」「頷き」「繰り返し」です。これは基本中の基本です。「相づち」は、「はい」とか「ほう」などといった同意、同感のしるしです。「頷き」は、首の上下運動です。「繰り返し」は、相手の発言の全部又は一部をリピートして返してあげることです。しかし、優秀な人ほど、部下が話し始めると、問題解決回路が作動して、「お前、だったらこうしろよ。」「こうすればいいじゃないか。」「なんでこうしないんだ。」と話を遮りがちです。そこで、そのような状況になりそうなときには「うん、なるほど。」「おう、そう思うんだな。」と、相づちの言葉を入れていただくと、その後、相手が何を言いたいかというのを引き出しやすくなるのではないかと思います。こうした「相づち」「頷き」「繰り返し」、これをアクティブリスニングの3要素と言っています。4.アクティブリスニングの実践では、これからアクティブリスニングを実践してみましょう。二人一組になって、一人には、自分のいる職場、あるいは自分が就いているポスト、仕事、これがどんなにすばらしい仕事なのか、どんなに素敵な職場なのか、心を込めて力説してください。そして、もう一人は、「相づち」「頷き」「繰り返し」は一切なし、無反応無表情で聞いてください。それでは、お願いします。***はい、そこまでです。お互いやりにくかったと思いますけど、無表情、無反応な人に対して話をしたらどんな気持ちになったでしょうか。やはり、頷いてもらえないと話をしにくいですよね。頷くというのは、首の上下運動だけで、相手の中から言葉とか気持ちというのを引き出してくる効果絶大だということが分かります。コーチングというのは「教え込む」ことではなくて「引き出す」ところにウェイトがありますから、頷くというのが基本中の基本の動作です。頷いてもらえないと言葉が出にくいだけではなくて、自分の発してい70 ファイナンス 2019 Nov.連載セミナー

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