2019年11月号 Vol.55 No.8
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財務総合政策研究所Ministry of Finance, Policy Research Institute1.教育学から学習学へ(1)人間は学ぶ存在おはようございます。本間正人です。本日の内容はコーチングですが、その前に、「教育学から学習学へ」という話を少ししたいと思います。学習学というのは、あまり皆さんお聞きになったことはないと思うのですけれど、私がつくった考え方です。登録商標も私が持っています。生物学では人間は「考える存在」、経済学では「経済的合理性に基づいて行動する存在」だと定義されます。しかし、そもそも人間は学ぶ存在です。人間には先天的に学ぶ力が備わっているのです。この「学ぶ存在」だという見方の方が、より本質的な人間の定義ではないかと思うのです。コミュニケーションに関しても、教わること以上に自ら学ぶことの方が大きい。人間は「生まれてから死ぬまで学び続ける存在」なのです。私は、最終学歴という言葉に大きな違和感を覚えます。本当に「学び終わり」で良いのでしょうか。皆さんが大学時代に学んできた理論と、実際に行う実務とは全然違います。現在の学校教育は個人主義モデル、競争原理重視で、個人のペーパーテストの成績が非常に重視されます。しかし、実際には組織の中で仕事をやれば、チームワークがとても重要で、個人の力量だけで結果が出るわけではありません。例えば、国会議員への対応とか、この人に先に根回ししておかないと話が通らないとか、いろいろなことを学び続けていくものです。(2)最新学習歴を更新し続ける最終学歴も当然大事ですが、「最新学習歴」を更新し続けることが、仕事がうまくいく秘訣です。社会が成長していくためには、みんながこの「最新学習歴」を更新し続けていくことが大切なのです。またそれが人生を豊かにしていくことではないかなと私は考えています。平成の時代は、残念ながら、日本の国としての学習力は下がっていたのではないかと思います。日本がこれから再生の道を歩んでいくためには、国として学習力・創造力を高めていくことが重要です。そのためにも学び続ける必要があるのです。2.コーチングとは(1)コーチの語源それでは、コーチングの話に移ります。コーチ(coach)という言葉は「馬車」という意味です。さかのぼるとハンガリーにコーチという地名があり、ここで16世紀に四輪の旅客用の馬車がつくられました。コーチ村の馬車は良いということで、地名が一般名詞化されました。そこから転じて動詞が生まれました。コーチングとは「大切な人をその人が現在いるところから、その人が望むところまで送り届ける」ことなのです。(2)「教え込む」のではなく、「引き出す」コーチングの対概念でコマンディングというのがあります。令和元年8月2日(金)開催夏季職員 トップセミナー本間 正人 氏(京都造形芸術大学副学長)コーチング ~役職者の役割~演題講師68 ファイナンス 2019 Nov.連載セミナー

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