2019年11月号 Vol.55 No.8
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コラム 経済トレンド65大臣官房総合政策課 調査員 杉山 渉/志水 真人健康志向とフードテック本稿では、フードテック(フード×テクノロジー)のうち、近年世界的に注目を浴びつつある植物肉が、高まりを見せる日本人の健康志向にどう影響を与えるかについて考察していく。食生活の変化・厚生労働省と農林水産省によれば、1日の理想的な食事バランスというものが決まっており、例えば、12~69歳の男性であれば2600kcal前後、10~69歳の女性であれば2200kcal前後が推奨されている(図表1)。・しかし、食生活は嗜好の変化や雇用・所得環境の変化などの影響を受けるため、常に人々が理想的な食事バランスを意識できているかは疑問の余地もある。直近約15年間でも、人口は横ばいにも関わらず、米や野菜の消費量は緩やかに減少、魚介類は大きく減少、一方で肉類は増加基調にあるなど変化は大きい(図表2)。・また近年は、増加している単身世帯において中食や外食の機会が増えているため、食事バランスを意識した食事が難しくなっている可能性もある(図表3)。図表1 理想的な食事バランス(kcal、SV)男性女性kcal主食副菜主菜牛乳乳製品果物6~9歳70歳以上6~9歳70歳以上1800±2004~55~63~42~3210~11歳10~69歳2200±2005~75~63~52~3212~69歳2600±2007~86~74~62~42~3(注)座り仕事が中心だが、歩行・軽いスポーツなどを5時間程度は行う人であることを前提条件としている。図表2 食物摂取量の変化51015152025(百万t)(百万t)米肉類魚介類野菜・果物(右軸)2018201320082003図表3 食料に対する支出割合の比較5238単身世帯二人以上世帯050100(%、2018)食材等菓子類調理食品外食飲料・酒類健康意識が強い背景・医療技術の向上で、結核などに代表される感染症での死亡リスクが大きく改善したため、平均寿命は堅調に延びてきた(図表4)。・現代における主な死亡要因は生活習慣病であり、6割強を占めている(図表5)。・そのような状況が周知の事実となる中で、2016年に行われた調査によれば、健康のために行っていることで、特に食事に気をつけている人が多いことが分かっている(図表6)。また、供給側をみても、栄養バランスやカロリーの表示、糖質制限など、健康を意識した商品の提供が多く見られるようになった。図表4 平均寿命の推移9080702001200420072010201320162017(歳)平均寿命(男性)平均寿命(女性)図表5 死亡要因63.536.5(%、2017)(注)ここでの生活習慣病とは、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、肺炎、糖尿病、高血圧疾患、肝疾患、腎不全の総称である。生活習慣病その他図表6 健康のためにしていること70350食事に気を付けている定期的に運動をしている喫煙をしない規則正しい生活を送っている健康食品やサプリメントを摂取している飲酒をしない(%、2016)58 ファイナンス 2019 Nov.連載経済 トレンド

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