2019年11月号 Vol.55 No.8
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要因とした国の厳しい財政状況による地方の歳入となる地方交付税(臨時財政対策債を含む)の伸び悩み、(2)地方の歳出である社会保障関係費の増加、をもたらしており、歳出歳入両面で地方自治体の政策運営が苦しい要因となっているのです。加えて、高齢者の増加は、地方圏ではすでにピークに達しつつありますが、今後大都市圏で特に増加し、その分費用も増大が見込まれています。地方自治体・住民でこの事実を直視し、議論を深める必要性を痛感しています。さらに、個別都道府県間の差という点では、特に税収の差で大都市圏と地方圏の財政力格差につながっています。地方自治体の自助努力を促すため、税収増の1/4は地方交付税の減にならない仕組みとなっており、図1の下側にある「留保財源」がそれに相当します。全国平均はプラス、新潟県はマイナスです。結果、全体として地方交付税が増えないなか、大都市圏は税収の増となっているところ、新潟県は歳入全体が減少する結果となっているのです。地方圏は、税収増につながりにくい下請け構造や資源的な産品によって国全体の産業と暮らしを支えている側面があり(例:新潟県のコメの生産は日本一、信濃川発電所で発電した電気はJR東日本の使用電力量の1/4)、国全体の産業立地と税源配分の在り方も引き続き大切な視点かと思います。なぜこんな状況になるまで対応してこなかったの?新潟県の財政運営の苦しさは、実は今に始まったことではありません。バブル崩壊後の景気低迷等による税収の伸び悩みや、国の景気対策に伴い発行した県債の返済増加で大幅な赤字が続き、平成11年度に財政健全化計画を策定、平成14年1月には財政健全化プログラムを策定(計画期間平成16年度まで、名目経済成長率1%で各年度平均約660億円の赤字を見込む)し、各種対策に取り組んできました。しかしながら、平成15年度からは資金手当債(一定限度で特別に発行が認められる地方交付税措置のない地方債の総称)を発行したにもかかわらず、収支均衡は達成できませんでした。平成16年9月には、その後の計画として財政健全化計画骨子(案)を公表(計画期間平成19年度まで、名目成長率平成16年度0.5%、その後1.0%で各年度平均約650億円の赤字を見込む)しています。この計画は成案とはならず、平成18年2月に、財政運営計画を策定。一転して、名目経済成長率3.4%(平成18~28年度の期間平均)とこれまでと比べ高い水準を用いるとともに、資金手当債や財源対策的基金を最大限活用するという方針を打ち出しました。資金手当債の発行は、その分単年度では歳出を維持しても収支悪化とならない効果はあるものの、国の支援なく返済しなければならないことから、インフレや税収増が起こらなければ、将来長年にわたって県の財政運営の制約になるリスクを抱えるものです(推移は図3の下側参照)。その後も様々な場で議論はあったものの、方針転換はせず、平成18年2月の計画と同様の考えで毎年度計画を改訂し、財政運営を行ってきました。当時の判断としては、国の経済政策等の施策とも連動し、県の施策が最大限効果を発揮すれば、景気が浮揚し成長が実現できると考えていたのです。残念ながら、経済成長率の実績は、当時の推計と比べると低い結果となっています(図2参照)。税収も、伸び悩む結果となっています。平成29年2月の改訂計画では、これまでの経済成長率の見通しと実績に乖離が生じていることを踏まえ、次期改訂に向けて検討することを記載。平成29年7月に示した平成28年度決算では、ついに財源対策的基金が減少する結果となり、その後も減少が続いています(図3の下側参照)。平成30年2月の改訂計画では、経済成長率の見通しをより堅実なものに見直し、財政運営が持続可能でないことを示し、計画本体において財政運営の方針転換を明確にしました。平成31年2月の改訂計画では、何ら手だてを講じなければ財源対策的基金が2年後(注:10月策定の行動計画における再計算では3年後)にも枯渇するため、持続可能な財政運営に向け、行動計画を策定することをうたい、令和元年10月に「新潟県行財政改革行動計画」を策定。結果として的確でない見通しを前提に財政運営を行ってきた県の責任を認めています。このように、県税収入の伸びを大きく見込んでいたこ56 ファイナンス 2019 Nov.連載ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?

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