2019年11月号 Vol.55 No.8
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第二十三回 令和4年度の予算編成ができない!?(2)ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?前回、財政の悪化により新潟県の政策運営がこのままでは立ち行かなくなることをご紹介しました。その収支の差の主な要因として、歳入では(1)人口減少等による地方交付税の減少や(2)税収の伸び悩み、歳出では(3)高齢化による社会保障関係費の増加等による歳出の高止まり、(4)今後、借金返済の実質的な負担が増加、とご説明したところです。前回で予告したとおり、今回は、高齢化による社会保障関係費の増が地方の財政運営にもたらしている影響と、よく質問される「なぜ対応が遅れたの?」について書きたいと思います。高齢化は自治体の歳入歳出両面の悪化要因ファイナンスの読者であれば、高齢化により医療、介護などの社会保障関係費の増加の一部が将来世代の負担となっているとともに、成長著しい諸外国と比べ将来の投資に十分資金を充てられていないことは重々承知のことかと思います。図1の左側は、地方交付税の配分に用いるために算出された歳出ニーズの主なものについて、都道府県分を足し合わせたものです。この図にあるとおり、厚生労働費≒社会保障関係費がこの3年間で5.7%も増加しています(平成27年度6.57兆円から平成30年度6.95兆円)。この社会保障関係費の増加にもかかわらず、合計は12兆円と同一水準で推移しています。その帳尻合わせ、というのはいいすぎとは思いますが、リーマンショック対応で臨時的に設けられた「歳出特別枠」のみならず、国の基準付けが弱い行政分野について人口と面積で簡素な算定を行う「包括算定経費」が大幅に減少しています。ただ、現実は、老朽化が進むインフラ施設の維持管理、過疎対策など、人口が減ったからと言って比例的に歳出を減らすことは難しい事項が多いです。赤字バス路線の維持費用など、むしろ増加するものもあります。このように、高齢化は、(1)社会保障関係費の増を新潟県総務管理部長(元財務省広報室長)佐久間 寛道図1 地方交付税の配分にあたっての主な需要額の推移と比較主な需要額(全都道府県計)主な需要額(新潟県)留保財源34,408厚生労働費65,756歳出特別枠等4,899包括算定経費15,823留保財源35,436(3.0%)厚生労働費69,520(5.7%)歳出特別枠等2,973(▲39.3%)包括算定経費13,053(▲17.5%)留保財源579厚生労働費1,330歳出特別枠等102包括算定経費389留保財源571(▲1.3%)厚生労働費1,355(1.9%)歳出特別枠等57(▲44.3%)包括算定経費319(▲18.0%)▲97億円平成年度平成年度平成年度平成年度(億円)(億円) ファイナンス 2019 Nov.55連載ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?

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