2019年11月号 Vol.55 No.8
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2017年に世界最高峰の一つである演劇の祭典・アヴィニョン演劇祭にて、アジア圏の劇団初のオープニング作品として話題をさらい、平成29年度第68回芸術選奨文部科学大臣賞、2019年4月フランス芸術文化勲章シュヴァリエを受章した宮城聰演出SPAC-静岡県舞台芸術センターによる『アンティゴネ』を上演。アメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されているパーク・アベニュー・アーモリーの広壮な歴史的建造物で、独創的な空間設計と、人を敵と味方に区別しない王女アンティゴネの思想に日本人の死生観を重ねた演出とのこと。日本経済新聞によると、「日本の地域劇団が、演劇の街ニューヨークで大きな反響を呼び起こした。宮城聡ひきいるSPAC(静岡舞台芸術センター)が、フランスの世界的演劇祭に続いて成功を収めたのだ。」、「約千席の会場で9月25日から12公演が行われたが完売。175ドル(約1万9千円)の良席に最高1890ドル(約20万円)を超えるプレミアがついた。」、「舞台は夢幻的。楽団でもあるSPACがインドネシアのガムランに通じる音楽を響かせ、文楽太夫のような語り手が役者の動きを導く。影、水音、波紋などが混然となる。異質なものを解け合わせるしなやかさと緻密さに、演出の独自性があった。」といい、「非営利の芸術センターであるアーモリーにはアートに敏感なニューヨーカーが集まる。劇が終わると観客は総立ちに。ニューヨーク・タイムズは『瞑想的な異世界に連れ去られる』と評した。」といい、「欧州での成功を受け、ニューヨークの大型公演で熱い賛辞を受けた演劇人となると、蜷川幸雄なきあと宮城聡しかいない。」とのこと。(8) 『杉本文楽 曾根崎心中』 期間:2019年10月19日~10月22日 リンカーンセンター・ローズシアター©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Odawara Art Foundationかつてドナルド・キーンは、ハーバード大学で前号でご紹介したエリセーエフから毎週、近松門左衛門の翻訳のために個人指導を受け、1949年に近松門左衛門の「国性爺合戦」について博士論文を書き、一度も見たことがない日本の人形劇をいろいろ説明したという。曰く、「どの写真でも、先ず目に映るのが人形遣いの顔、それからその衣装、そして最後に人形遣いが遣っている人形という順で、人形遣いの方が人形よりもはるかに目立つのに、観衆にどうしてその人形遣いがいるのを忘れることができるのか、いくら考えても合点がいかなかった。しかし、そのうちついに私も日本で文楽を見ることになって、文楽の愛好者たちが言っていることが決して間違っていないことが分かった。最初の二、三分が過ぎると、私はもう完全に人形の世界に引き入れられていて、その後で人形遣いの方に目を向けることがある時は、それは自分から進んでであって、自然にその方に注意が行くからではなかった。」という。その文楽については、ニューヨークにおいて、写真、彫刻など幅広い分野で活躍し、紫綬褒章、フランス芸術文化勲章オフィシエ叙勲、文化功労者である現代美術作家・杉本博司構成・演出・美術による『杉本文楽 曾根崎心中』を上演。2003年にユネスコの「世界無形遺産」に登録された人形浄瑠璃文楽に杉本博司が新しい魅力を注ぎ込んだ作品。更に、会期中、官民が米国で実施する以下のような日本文化紹介事業、日米交流事業が「Japan 2019」参加企画となっている。(9)酒食文化も日本文化の重要な要素。「和食;日本人の伝統的な食文化」は2013年にユネスコの世界文化遺産にも登録された。酒については、国税庁「酒のしおり」(平成31年3月)によると、日本産酒類は、近年、国際的なコンクールで受賞するなど、世界的な評価が高まっており、世界の食市場は今後も拡大が見込まれる中、「日本産酒類の輸出金額は、平成30年は約618億円(対前年比113.4%)となり、7年連続で過去最高を記録」し、「輸出金額が上位の国(地域)を見ると、アメリ ファイナンス 2019 Nov.43ペリー来航以来の日米文化交流と「Japan 2019」(下)SPOT

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