2019年11月号 Vol.55 No.8
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部が一つになって、空間全部が作品となり、包み込まれるようになった」という。もう一人挙げるなら、2015年、森美術館の『村上隆の五百羅漢図展』で31万人を集め、文化庁第66回芸術選奨(芸術部門)文部科学大臣賞を受賞した村上隆。ポップアーティストであり、アートを中心に派生する事業のマネジメント、ギャラリー運営なども手掛ける。自分の作品を、浮世絵のように陰のない日本画の伝統の最先端にいる「スーパーフラット」と名付けた。プロモーションの才能があり、戦略と努力で国際的評価を獲得した稀有な作家だという。日本の現代アートを欧米に紹介したのが、アレクサンドラ・モンロー。戦後から現代までの日本美術を美術史の一貫した立場から実証的に研究し、展覧会を企画。1994年に横浜美術館のゲスト・キュレーターとして企画した「戦後日本の前衛美術:空へ叫び」展は、日本の戦後美術史を新たに再構築し、戦後から現代にわたる重要な美術運動を包括的に論じた画期的な展覧会とされ、1994-95年にかけて国際交流基金がアメリカで巡回展を開催し高い評価。同展とその図録は、日本の現代美術家たちの国際的な評価を高めることに大きく貢献。1989年以降、「草間彌生」回顧展(1989)、「Yesオノ・ヨーコ」展(2000)、村上隆企画「リトル・ボーイ:爆発する日本のサブカルチャー・アート」展(2005)など戦後から現代までの日本美術を取り上げる展覧会を企画また共同組織。学術的研究に裏付けられた図録は、英語圏にグローバルな近現代美術史における日本美術の理解を深める役割を果たす。また、2009年にグッゲンハイム美術館で開催した「第三の心:アメリカ人アーティストが見つめたアジア、1860-1989」展は、全米人文科学基金から第一回長官特別賞を受賞。日本人アーティスト中で草間彌生と村上隆は世界でも非常に売れているというアレクサンドラ・モンローに、なぜその二人なのかと聞いてみると「この二人はキャラが立っていて、話が面白い。それに彼らは作品数が多い。それはとても大切なことだ。」とのこと。⓮「Japan 2019」これまで日本や日本文化への理解・関心の裾野を広げるための様々な取り組みが行われてきているが、最近では、2018年7月から2019年2月にかけて、日本政府がフランス政府と共同で取り組み、350万人を超える動員数を記録した「Japonismes 2018」。あいにく、周りに観た人がいなかったので、フランスの文化関係のイベントに行ってみる。霞が関にもほど近い、パナソニック東京汐留ビルにある「パナソニック汐留ミュージアム」改め「パナソニック汐留美術館」(昨年からBS11で放送されている「フランス人がときめいた日本の美術館」の原案者、フランス人美術史家、ソフィー・リチャードが、著書で「訪れる人をわくわくさせる」「世にあまり知られていないデザイナーや、めったに見られない展示品と出会うにはうってつけの美術館」として紹介。)で、Eテレでも放送されたフランスの象徴主義の巨匠ギュスターヴ・モローの展覧会を開催。そこで、「Japonismes 2018」を実際に見たフランスの外交官に聞いてみるとフランスで大変好評で、今度はフランスが日本でフランス文化についてのイベントを企画しているとのことだった。フランスメディアによる「Japonismes 2018」関連の報道も1,700件にも上ったという。いくつかの例を挙げると、「パリ、日本の首都になる」:「これだけの日本文化の真骨頂とも言える作品、プロジェクトが一堂に会する機会は、今後当分ないであろう。」(テレラマ誌)、「日仏の愛の物語」「19世紀には、印象派の画家たちは、日本の浮世絵にインスピレーションを得たが、今日、漫画、ファッション、美食などが、日本文化に魅了されるきっかけとなっている。」(AFP通信)、「日本がエースのフォーカード」、「どっちを向いても日本だらけ?明治・開国150周年、日仏外交樹立160周年を記念する『ジャポニスム』が最高潮に達しているのだから当然のこと。」(ル・パリジャン紙)フランスに続き、米国においても、本年、日本や日本文化への理解・関心の裾野を広げる目的で、「Japan 2019」が開催されている。2019年3月にニューヨークのメトロポリタン美術館で開催された「『源氏物語』展 in NEW YORK~紫式部、千年の時めき~」を皮切りに、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーオブ・アートでの「日本美術に見る動物の姿」展などの展覧会や、宮城聰演出『アンティゴネ』、『杉本文楽 曾根崎心中』などの舞台公演を実施。 ファイナンス 2019 Nov.39ペリー来航以来の日米文化交流と「Japan 2019」(下)SPOT

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