2019年11月号 Vol.55 No.8
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ト氏でなければ駄目」と言うほど氏に深く信頼を寄せていたという。また、フレデリック・ショットの日本マンガ文化全体を俯瞰した『Manga! Manga! The World of Japanese Comics』は、アメリカにおける日本マンガの商業展開が本格的に始まる以前の1983年に出版され、現在でも、世界における日本マンガ研究者の必読書だという。その業績はハリウッドにも及ぶ。科学技術が飛躍的に高度化し多くの人間が電脳によってインターネットに直接アクセスできる時代の日本を舞台とする「攻殻機動隊」も英訳。ハリウッド映画、「マトリックス」のアイディアになったといわれている。麻生外務大臣時代の平成19年に海外でマンガ文化の普及に貢献する漫画作家を顕彰するために創設された「国際漫画賞」の日本国際漫画賞実行委員会(委員長 外務大臣)のメンバーでもある。その表彰式は、昨年、ロシア大使館の対面にある飯倉公館で開催された。外務大臣主催の行事しか使えないというこの施設、稼働率を気にしないランク・コンシャスな運用は流石、外務省である。その国際漫画賞の表彰式のときだったか、「どうして『攻殻機動隊』のような日本人が読んでも難しい漫画を翻訳したのか。」と聞いたら、確か、誰かが断ったら自分に回ってきたと言って笑っていた。日本語のジョークもとばす、とぼけた人だった。⓭日本の現代アートを世界に紹介 ―アレクサンドラ・モンロー2003年、現代アートの核となるような国際的な美術館を目指して、六本木ヒルズの森タワーの最上階に文化施設、森美術館・森アーツセンターが設立された。森アーツセンターの藤井宏昭理事長によると、「森美術館を最上階に設立したのは、森ビルの森稔社長の明確な意志で、文化は経済より上だという事を示したかったものです。森アーツセンターは49階から53階まであり最上階の最も高値で賃貸出来る場所をこの様に出来るのは創業者の強い意志以外にありません。世界にもあまり例はないようです。」とのこと。その後、2007年には国立新美術館と東京ミッドタウンのサントリー美術館が設立され、以降、3つの美術館が連携して、「六本木アート・トライアングル」というネットワークを結成し、六本木をアートの街にしようという活動が進められているという。米国で富裕層に人気がある旅行誌が先月「発表した読者投票による世界の大都市の魅力ランキングで東京が4年連続1位、2位に京都、5位に大阪が選ばれたという。訪日外国人が増加する中、富裕層向けの通訳ガイドから聞いた話によると、上野など月曜日が休館日の美術館が多い中、屋外の予定が台無しになった雨の月曜日のピンチヒッターとして、月曜日にもオープンしているこれらの六本木の美術館はとても便利だという。現代アートには、なじみのない人が多いと思われるが、世界的に評価の高い日本人アーティストがいる。例えば、草間彌生。2017年の国立新美術館開館10周年で52万人を集めた「草間彌生 わが永遠の魂」展。六本木の新国立美術館の巨大なホールの4つの壁を上から下まで埋め尽くす絵。ミュージアムショップには60分待ちの長蛇の列。「草間彌生 わが永遠の魂」展のミュージアムショップでの60分待ちの行列確か文化勲章を受賞したときのインタビューにて、「誰か他のアーティストの作品を見ますか?」と問われて、「誰の絵もみません。私が一番上手いから。」と言い放つ。インタビューを受けている間も、絵を描く手が止まらず、アトリエで朝から晩まで描いた後、病院に戻り、そこでも絵を描いているという、当時、87歳とは思えない溢れるエネルギー。森美術館のオープニング第二弾で開催された「クサマトリックス」では、「真っ赤な部屋に白いドットがちりばめられ、広大な東京の広がりも、自分の小さな姿も、ドットも全38 ファイナンス 2019 Nov.SPOT

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