2019年11月号 Vol.55 No.8
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門・個人課税部門・法人課税部門の大きく5つに分かれています。非常勤職員を含めると50名程度、最も忙しい2~3月の確定申告期は、総勢70~80名程度の規模になります。怖いイメージのある税務署ですが、働いている職員は使命感のある職員が多く、税に関する質問があれば親切に答えてくれます。「正直者には尊敬の的、悪徳者には畏怖の的」という言葉があり、GHQ歳入課長ハロルド・モス氏が、国税庁が発足する際に贈ったスローガンです。悪質な脱税を厳しく取り締まるだけでなく、真面目に納税している国民の相談に寄り添うことも、税務職員の大切な役割です。平日に税務署に行く時間が取れないという方には、国税局電話相談センターがおすすめです。最寄りの税務署に電話をして音声案内に従い、「税に関する一般的な相談」をお選びいただければコールセンターにつながります。また、まずは自分で調べたいという方には、国税庁のホームページのタックスアンサーによくある質問がまとめられております。コールセンターやタックスアンサーで解決ができない問題は、事前に税務署に電話をして予約した上で相談に行くと、待ち時間がなくスムーズです。特に、1~3月は、確定申告前で非常に混み合いますので、その時期を避けて事前に相談をしておくと、職員も丁寧に対応できます。難しい申告などわからないことがあれば、是非、コールセンター、税務署、または税理士さんに相談をしていただければと思います。2税務行政の最高責任者としての税務署長税務署長は、税務署の運営に関する最高責任者です。国税の法律において、多くの権限は税務署長が決定権を持っています。例えば、国税通則法第40条において、「税務署長は、…国税が…完納されない場合、…滞納処分を行なう。」と定められています。滞納処分とは、差押えなどによって強制的に税を徴収することをいいます。裁判所の令状がなく強制的な執行をできるのは例外的な規定であり、それだけ税の徴収が国家の機能として重要視されていることがわかります。近江八幡税務署長に着任する前、仙台国税局に出向していた際に、徴収官として、悪質な滞納者の店舗を捜索して、現金を差し押さえたことがあります。「○時○分、国税徴収法第142条にもとづき、捜索を開始します。」という先輩職員の一声で捜索は始まり、事務所の売上金を差し押さえました。強引に取り立てるだけが徴収職員の仕事ではありません。納税者の資力などを見極め、納税誠意のある納税者に対しては、法律の規定に基づいて分納を認めるなど、納税者としっかりと向き合った対応が求められます。徴収職員だけでなく、税務調査を行う職員、申告相談を行う職員、全ての税務職員に、現場での対応力や人間力が求められます。私が一緒に仕事をした税務職員の方々は、立派で尊敬のできる方々が多かったと感じています。税務署長の役割は、税務署の職員と向き合って、事案の決裁を行い、行政機関としての最終的な意思決定を行うことです。税務署長が現場に行って、納税者と対峙することはありません。向き合う相手は署の職員です。決裁を行う際は、内容の吟味はもちろんですが、署の職員の雰囲気を感じ取るようにしていました。「あれ、○○さん、いつもより元気がないな」「××さん、いつもより緊張してるな」といったそんなことではありますが、背景を探ってみると「実は…」といった事情があるときもあります。職員が「実は…」と話してきてくれてからが、署長の腕の見せ所です。経験のある職員が悩みぬいて、なお残る課題なのでどれも難しい問題ばかりです。途方もない難題を前に、「うーむ」と一人で悩んだことも多々あります。ましてや、国民の権利義務に直結する税の問題であれば、なおさらです。そんな時に最も頼りになったのは、署のナンバー2を務める総務課長である池田さんでした。新米税務署長であったがゆえに、ご苦労をたくさんかけてしまいましたが、いつも的確なアドバイスを下さいました。また、国税庁・国税局に務める諸先輩方、滋賀県下をはじめとする他署の署長の方々にも、いつも親身になって相談に乗っていただきました。大阪国税局の明るくフレンドリーな気質がとてもありがたかったです。様々な情報や意見を集めた上で、最後は自分の決断です。適正かつ公平な賦課及び徴収とはどうあるべきか、納得いくまで悩んで、後悔のない決断をしなければなりません。目論見通りに事が進んで、職員と一緒 ファイナンス 2019 Nov.27税務署の将来―新米税務署長からの提言 SPOT

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