2019年11月号 Vol.55 No.8
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平成30年7月から1年間、滋賀県にある近江八幡税務署長として勤務する経験を得ました。ファイナンスをご講読の皆さまに、「税務署とはどんなところか」「税務署長は普段どのような仕事をしているのか」などについてご紹介し、あるべき税務署の将来像について、新米の税務署長としての個人的な見解を述べさせていただきたいと思います。1税務署とはどんなところ?警察署や消防署など、名前に「署」がつく機関は多々あります。警察署や消防署にはパトカーや消防車があり、子供でもイメージを持ちやすいのですが、税務署を小学生に説明をするためには、少し工夫が必要になります。小学生に税務署を説明するときは、(1)税務署が税金を集めるところであるということを説明して、(2)身の回りにある税金の例として消費税をあげ、(3)税金の使い道として健康保険や道路の話をする、というように、3段階ぐらいのステップを踏まないといけません。大人に税務署を説明するときも、個人で事業をされている方には馴染みがあるかもしれませんが、給与所得と年末調整だけで、確定申告をしていないような方は、「税務署」と言われてもピンとこないかもしれません。税務署のイメージをつかむため、税務署や国税組織が取り上げられた映画やテレビドラマの例を見てみましょう。国税組織が取り上げられた映画で有名なのは、昭和62年公開の『マルサの女』です。宮本信子さんが演*1) 棚卸資産(商品など)を家事のために消費したり、贈与したような場合も収入金額になり、売上として計上する必要があります。*2) 国税局は、税務署の上部組織であり、全国に11の国税局と沖縄国税事務所があります。国税局は全ての県にあるわけではありません。近江八幡税務署は滋賀県にありますが、国税局の所管は大阪国税局となります。じる国税調査官が、老夫婦が経営しているスーパーに税務調査に行き、「売れ残ったコロッケはどうしているの」と質問して、老夫婦が「売れ残りは家で食べているよ」と答えたところ、国税調査官が家事消費*1として売上計上漏れがあることを指摘するというシーンが冒頭にあります。この国税調査官が勤務しているのが税務署です。ちなみにこの後、宮本信子さん演じる国税調査官は、国税査察官として国税局査察部(いわゆる「マルサ」)に異動を命じられることとなり、映画の舞台は税務署から国税局に移ります*2。他に国税組織が取り上げられたテレビドラマでは、平成24年に日本テレビ系列で放映された『トッカン』というドラマがあり、井上真央さんが演じる国税徴収官が、税金の滞納者からの取立てに日々奮闘する様子が描かれています。〈税務職員の役割〉これまで、「国税調査官」「国税徴収官」「国税査察官」と、3つの職名が登場しました。「国税調査官」は、個人や会社などを訪れて、適正な申告が行われているかどうか税務調査や申告指導などを行います。「国税徴収官」は、滞納した税金の督促や滞納処分などを行います。「国税査察官」は、裁判官から許可状を得て、悪質な脱税者に対して捜索・差押等の強制調査を行い、刑事罰を求めるため告発を行います。国税査察官は、国税局に勤務しており、通常は税務署にはおりません。近江八幡署には、私を含めて44名の常勤職員がおりました。部署は、総務課・管理運営部門・徴収部税務署の将来 ―新米税務署長からの提言前近江八幡税務署長(個人情報保護委員会事務局 参事官補佐) 田宮 寿人26 ファイナンス 2019 Nov.SPOT

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