2019年11月号 Vol.55 No.8
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ともありました。豊田スタジアムの初戦である9月23日のウェールズ対ジョージア戦、試合会場は組織委員会の管轄となるため、私は試合会場ではなく、開催都市がラグビー中継のパブリックビューイングやラグビー体験等ラグビーファンのために実施する入場無料のイベントである「ファンゾーン」の会場で運営業務に従事していました。試合開始時間となり、パブリックビューイングのモニター越しではありましたが、眩い照明が照らす青々とした芝生のピッチに選手が入場していく様子が放映された時は、苦労して整備した会場が世界中に放映されていることを実感し、非常に感慨深いものがありました。豆知識ですが、ラグビーワールドカップ開催時の豊田スタジアムの芝生は、東日本大震災で塩害にあった土地を蘇らせるべく、地元企業と農家の方々が苦労を重ねて育てた「東日本復興芝生」が採用されており、選手の活躍を足元から支えています。(2)ラグビーワールドカップ開催期間中ラグビーワールドカップ開催期間中は、前述のとおり、ファンゾーンの運営に従事していました。愛知県・豊田市のファンゾーンのテーマは「MATSURI」。会場内は縁日をイメージした提灯等で装飾されており、400インチの大型スクリーン、ラグビー体験コーナー、ビール(ラグビーワールドカップのスポンサーであるハイネケン)、キッチンカーでのケータリング等さまざまなブースが出店されていました。ファンゾーンを振り返ると、やはり、日本代表戦のパブリックビューイングの際に、会場全体が一体となり日本の勝利に歓喜した来場者の方々の姿が思い出されます。豊田スタジアムで試合が行われた日本代表対サモア代表戦を例にファンゾーン会場の盛り上がりをご紹介させていただきます。会場内は、豊田スタジアムのチケットが完売であったためスタジアムで応援できないラグビーファン、前の試合で格上のアイルランドに金星を挙げて(「静岡ショック」と各メディアが報道)注目度がさらに高まった日本代表をみたいというファンで満員となっていました。試合の序盤は、ペナルティーキック(3点)で両チームが得点をあげる展開となり、豊田市の隣の岡崎市出身の田村優選手がペナルティーキックを成功させると会場には歓声が聞こえ観客同士のハイタッチが見られました。その後、日本が1トライをあげ、リードして前半を終えました。後半は、地元チーム所属の姫野選手がトライをあげると会場は大盛り上がり、会場には大歓声があがり会場はヒートアップ、さらに後半残り5分に福岡選手がトライをあげ日本が攻勢を強めました。ラグビーの勝ち点は複雑で勝利すると勝ち点4、勝敗にかかわらず「4トライ以上あげた場合」、「7点差以内の敗戦」の場合は、ボーナスポイント1点が加算されます。予選を突破するにはボーナスポイントを多く獲得することが重要となるため、会場には「あと1トライをあげ、ボーナスポイント1を」という思いが強まるなか、3トライのまま後半ラストワンプレーのホーンが鳴りました。相手陣内での日本の攻撃が続き、最後は松島選手がトライをあげ、劇的なボーナスポイント1獲得に会場のボルテージは最高潮となり、試合終了後も来場者の興奮は収まりませんでした。来場者の方々は満足した表情で帰宅され、運営側としてもやりがいを感じました。ここでまたひとつ豆知識です。ラグビーは「ビールを飲みながらの観戦」が当たり前の文化であり、ラグビーワールドカップ2015イングランド大会では、同じ会場でラグビーとサッカーのビール消費量を比較したところ、ラグビーはサッカーの6倍というデータもあります。ファンゾーン会場でもビールを飲みながら観戦する方は多く見られました。(特に海外の方)ファンゾーンの運営にあたっては、想定外の事象が発生し対応が必要となることもありました。例えば、ファンゾーン会場は3,000人がパブリックビューイングを観覧できるスペースを用意していたのですが、日本代表が開幕戦に勝利すると注目度が高まり、9月28日に行われた日本代表対アイルランド代表との試合は客席のキャパシティーを超える方の来場があったため、来場者の安全を考えて入場を規制することになりました。入場規制のタイミング、会場前で入場できず24 ファイナンス 2019 Nov.

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