2019年11月号 Vol.55 No.8
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1はじめに「大法人の電子申告義務化」、皆さんには聞き慣れたフレーズでしょうか。国税庁では、「大法人の電子申告義務化」が円滑に導入されるよう、組織を挙げて制度の周知・広報、相談、指導などに丁寧に取り組むとともに、電子申告の環境整備としてのシステム開発などを着実に進めています。本稿では、「大法人の電子申告義務化」について、皆さんの理解を更に深めていただくため、電子申告義務化制度の導入経緯等、概要、電子化促進のための環境整備を説明していきます。2電子申告義務化制度の導入経緯等まずは、「大法人の電子申告義務化」が始まることとなった経緯について説明します。平成28年9月に「経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革に関する基本的事項を総合的に調査審議すること」を目的として設置された規制改革推進会議で、規制改革、行政手続の簡素化、IT化を一体的に進めるべき重点分野の一つとして「国税」分野が選定され、行政手続コストの削減目標が検討されることとなりました。その後、「行政手続部会取りまとめ(平成29年3月29日 規制改革推進会議行政手続部会決定)」で「電子申告の義務化が実現されることを前提として、大法人の法人税・消費税の申告について、電子申告(e-Tax)の利用率100%」との数値目標が設定された後、平成29年6月に、期限を定めて確実に改革の実現を図っていくための「未来投資戦略2017」及び「規制改革実施計画」が閣議決定され、この「行政手続部会の取りまとめに沿って、積極的かつ着実に行政手続コストの削減に向けた取組を進める」こととされました。これらを踏まえ、平成30年度税制改正において、大法人の法人税等の申告について電子申告の義務化が法制化され、令和2年4月1日以後に開始する事業年度等から、資本金1億円超などの要件に該当する大法人は、法人税等についてe-Taxによる申告が義務化されました。これを受けて、財務省では、平成30年3月末に「『行政手続コスト』削減のための基本計画」を改定し、大法人の法人税・消費税のe-Tax利用率を100%とする目標を設定するとともに、申告書の電子化促進のための環境整備を行うこととなりました。3電子申告義務化制度の概要(次頁図1-1及び図1-2参照)電子申告義務化制度の概要は次のとおりです。(1)対象税目申告手続が一体として行われるものを一手続として数えると、法人税及び地方法人税、消費税及び地方消費税の実質二手続が義務化の対象となりますが、その他に地方税の法人住民税及び法人事業税が義務化の対象となります。(2)対象法人の範囲法人税及び地方法人税は、①内国法人のうち、その事業年度開始の時において資本金の額等が1億円を超える法人と、②相互会社、投資法人及び特定目的会社が対象となります。なお、②は、資本金の額等にかかわらず一律対象となります。消費税及び地方消費税は、法人税等の義務化の対象法人に加え、国及び地方公共団体が対象となります。また、資本金の額等が1億円超であるかどうかは、大法人の電子申告義務化 制度が始まります国税庁情報技術室 電子申告義務化担当チーフ 仲 佑治10 ファイナンス 2019 Nov.SPOT

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