2019年11月号 Vol.55 No.8
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情報発信や納税者の利便性向上、 仲介業者を通じた呼びかけも実施シェアリングエコノミー等新分野の経済活動が広がってきたことから、国税庁では適正課税を確保するための取組みを行っている。新分野の経済活動には、主に図表7ようなものがあるが、ネットワーク上で行われており、(1)広域的・国際的な取引が比較的容易である、(2)足が速い、(3)無店舗形態の取引やヒト・モノの移動を伴わない取引も存在するなど、外観上は取引の実態が分かりにくい。また、(4)申告手続等に馴染みのない方も参入が容易である、などの特徴がある。国税庁は、こうした取引を的確に把握し、適正な申告を実現するための環境づくりを進めている(図表8)。まず、国税庁のホームページを通じ、税務手続きや課税上の取扱いについて情報発信をするとともに、納税者の利便性を向上させるため、平成30年分の申告から、スマートフォン専用画面による申告書の作成を可能にする(P7参照)。また、仲介事業者・業界団体を通じた適正申告の呼びかけなども行っている。シェアリングエコノミーでは、給与所得者が副業として取引を行う機会も多い。大部分の給与所得者は給与の支払者が行う年末調整によって、源泉徴収された所得税額と納付すべき所得税額との過不足が清算されため、確定申告の必要はないが、副収入等によって給与所得以外に20万円を超える所得を得ている場合には、確定申告が必要となる。給与所得者の副収入には様々なものが考えられるが、シェアリングエコノミーによる所得は、原則雑所得に該当する。なお、個人が空き部屋などを有料で旅行者に宿泊させるいわゆる「民泊」は、不動産所得と混同しやすいが、一般的に利用者の安全管理や衛生管理、また、一定程度の観光サービスの提供等を伴うものであることから、雑所得に該当する。取引を的確に把握し、適正な申告を実現するための環境づくり国税庁の取組み(1)図表7 新分野の経済活動の取引例シェアリングビジネス・サービスネット広告(アフィリエイト等)暗号資産(仮想通貨)ネット通販・ネットオークションデジタルコンテンツ図表8 適正申告のための環境作り〈掲載内容の例〉●確定申告等の税務手続●取引に関する課税上の取扱い●納税者利便の向上●国税庁ホームページを通じた情報発信●仲介事業者・業界団体を通じた適正申告の呼びかけ〈2019年1月開始の取組例〉●スマートフォン専用画面で申告書作成●QRコードを利用したコンビニ納付〈取組例〉●業界団体から会員各社(仲介事業者)へ呼びかけ●仲介事業者から利用者へ呼びかけ6 ファイナンス 2019 Nov.

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