ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
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ついては、強化費用として運用基金を10兆円ぐらい準備して、それを世界トップレベルの人材、機関に任せ運用する。そしてここでプールされる教育機関、研究機関への寄付に対する免税措置を行うのです。冒頭のお金は国から入れ、運用もまとめて行うが、基金はそれぞれの機関が更に集められるようにする。企業側がマッチアップして寄付する税的な仕組みも埋め込むべきです。基金の運用益については、半分ぐらいを予算化して、そのうちの半分は教員やサポートスタッフの人件費に回し、残りを施設のリノベーションや人材育成グラントに回していくのです。(3)年数兆円で未来は変わるこれまで申し上げてきた、研究者の待遇改善、Ph.D.学生の育成グラント、初等・中等教育の刷新、大学交付金・国研予算の確保、研究開発予算の増額、こういった費用は合計で年間2兆円程度です。だから社会保障費約120兆円のうち1割か2割削減しろという話ではないのです。1パーセントか2パーセントの話なのです。5.おわりに最後に、国及び財務省への期待というのがあります。10年以上のスパンで物事を考え、本当に仕掛けられる機関は国だけです。そのため手なりでは普通に起きないようなことをぜひ仕掛けていただけるとうれしいなと思います。戦略の第一ステップは、世の中を俯瞰して細々とした視点を超えて構造的に考えて、勝ち筋を考えて一貫したアクションで落とし込むことです。For the Nationという視点でぜひ育てていただけるとありがたいなと思います。素敵な未来を残そうと思ったときに、みんなが同じ方向に向いていることが重要で、かつ、どういう世界を作っていこうという意識や気持ちが大事だと思っています。是非ともそのような視点で未来を仕掛けていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。講師略歴安宅 和人(あたか かずと)慶応義塾大学環境情報学部教授/ヤフー株式会社CSO東京大学大学院生物化学専攻にて修士課程修了後、マッキンゼー入社。4年半の勤務後、イェール大学脳神経科学プログラムに入学。2001年春、学位取得(Ph.D.)。2001年末マッキンゼー復帰に伴い帰国。マーケティング研究グループのアジア太平洋地域中心メンバーの一人として幅広い商品・事業開発、ブランド再生に関わる。2008年よりヤフー。2012年7月よりCSO(現兼務)。全社横断的な戦略課題の解決、事業開発に加え、途中データ及び研究開発部門も統括。2016年春より慶応義塾大学SFCにてデータドリブン時代の基礎教養について教える。2018年9月より現職。内閣府「CSTI 基本計画専門調査会」委員、「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」運営委員、経団連「未来社会協創TF」委員なども務める。著書に「イシューからはじめよ」(英治出版)など。 ファイナンス 2019 Oct.71夏季職員トップセミナー 連載セミナー

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