ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
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社会保障制度をすべての世代のためのものに転換し、これらを次世代に引き継ぐ国民は一人ひとりの努力で生活を営んでいるが、子育てや医療、介護、老後生活など、自分だけでは解決できないリスクに直面することもある。そうしたリスクに対して、社会全体で助け合い、支え合おうとする仕組みが社会保障制度だ(図表1)。社会保障の費用は、保険料によって賄うのが基本になっているが、それだけでは現役世代に負担が集中してしまう。そこで、一部を税金や借金で賄っている。借金の返済は主に次世代が担うことになるため、子や孫に負担を先送りしている状況と言える。日本は速いスピードで高齢化が進んでおり、高齢化に伴い社会保障の費用は増え続け、税金や借金に頼る分も増えている。現在の社会保障制度を次世代に引き継ぐためには、安定的な財源の確保が必要となる(図表2)。私たちが受益する社会保障の費用は、あらゆる世代が幅広く負担を分かち合いながら、私たちで賄う必要がある。また、少子高齢化という最大の壁に立ち向かうため、従来、高齢者中心となっていた社会保障制度を拡充し、子育て世代のためにも使えるよう「全世代型」に転換していかなければならない。こうした背景の下、消費税率は10%へ引き上げられた。消費税率引上げの背景は?社会保障制度の充実と安定図表1●社会保障と財源0歳65歳年金老後の生活の安定のための年金の支給介護高齢などにより、寝たきりや認知症等で介護が必要になったときのリスクを社会全体で支え合う医療病気やケガをしたときのリスクを社会全体で支え合う子ども・子育て等保育所の整備や児童手当の支給女:87歳(平均寿命)男:81歳(平均寿命)56.9兆円11.6兆円39.6兆円15.6兆円123.7兆円税金資産収入等保険料71.5財源120.3兆円+資産収入借金税金+借金48.8令和元年度●社会保障の役割と受益する世代●社会保障給付費の財源図表2●社会保障の持続可能性●日本の高齢化率(高齢化率=総人口に占める65歳以上人口の割合)●社会保障給付をまかなう税金や借金の増加約40兆円約1.8倍約16兆円約50兆円約71兆円(年)日独仏英米税金+借金(参考)保険料(%)(出典)国立社会保障・人口問題研究所「平成29年度社会保障費用統計」(出典)日本:総務省「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年4月推計)」諸外国:国連“World Population Prospects 2019”051015202530354032272217127令和2272217127平成210人に約1人が高齢者(平成2年)10人に約4人が高齢者(令和32年)平成2年度平成29年度約3.1倍 ファイナンス 2019 Oct.3引上げの背景は? 使い道は? 影響緩和策は?消費税率の引上げについて特集

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