ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
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は、世界中の公的機関や民間企業で活用されているアンケート調査です。この調査で「動機と規律の両方が高い組織はパフォーマンスが高い」ということが明らかになっています。このような調査も活用して定量的観測を行いながら、経営幹部は「去年のあの施策は効果があった。」とか「去年あれをやってここまで進んだからこそ、来年度はこれができるようになる。」と対応していく。組織改革を継続している中にも、その時の組織の状況を把握して、更なる施策や工夫を反映させる、ということが可能になります。(4)自分の組織に誇りを持つ組織理念というものは「組織のために自分は何をすべきか。」ということもあるのですが、「自分の組織なのだから自分のためにも魅力的な組織にしていくのだ。」と考えることも重要です。社会のために問題解決することに対して今の若い世代は非常に意識が高いことも踏まえて、「社会のために役に立つ良い組織であること、それが自分にとっても良い組織なのだ。」という誇りを引き継いでいくことが大事なのではないでしょうか。(5)いずれも大事な6つの大きな取組取組に当たっては、まず、職員アンケート、職員ヒアリング等により、財務省が組織として抱える課題を抽出し、若手・女性職員など幅広い職員の参画も得ながら、プロジェクトの目的・取組方針、今後必要となる具体策等を整理し、それをこの6つに体系化しました。その後、幹部職員を中心にコンプライアンスやマネジメントに関する研修を繰り返し、多面観察(いわゆる360度評価)の導入、働き方・業務の改善提案の募集・実現、省内外とのコミュニケーション向上のための取組を進めるなど、具体策を一つ一つ実現し、風通しが良く、多様な人材が活躍できる、コンプライアンス意識の高い職場づくりに取り組んできました。取組に当たっては、3つの方針を立てました。一つ目は繰り返しになりますが、どこかで誰かがやっている、ではなく、多くの方に参画いただくこと。例えば、財務省再生プロジェクトの6つの大きな取組は、どれか一つが欠けてもうまくいきません。取組については省内アンケートを約9,000人の方にお願いして、82%からいただいた回答、アンケート調査の自由記載欄に寄せられた多くの意見を元に抽出しました。もう一つには、「何に取り組むか」を構築するだけではなく「実行し、実現すること」を主眼に取り組むことです。また、変えるために変えるのではなく、地道なことも含めてやるべきことをやることに配慮しました。三つ目には、今回構築する取組が、その時代にふさわしく進化していく工夫を盛り込むことです。継続・進化は導入よりも格段に困難なものであり、その意味で、財務省再生の取組はまだ緒についたばかりです。「これができるようになると、次はこれができるようになる。」「今これをやりたいのだけれど、その前にこれができないとそこに進めない。」といったことも計画や施策に織り込みながら、この大きな6つの中にある要素を質高く組み合わせて今後ともこの取組を継続・進化させていければと考えています。ご清聴ありがとうございました。講師略歴秋池 玲子(あきいけ れいこ)ボストン・コンサルティング・グループ マネージング・ディレクター&シニア・パートナー早稲田大学理工学部、同大学院修士課程修了、マサチューセッツ工科大学スローン経営学大学院修了。キリンビール株式会社、マッキンゼー・アンド・カンパニー、産業再生機構を経て2006年にボストン・コンサルティング・グループに入社。産業再生機構では、支援先の経営者として事業再生の実務に当たる。2018年4月、経済同友会副代表幹事。同年7月、財務省参与。広域な業界の企業に対して、事業戦略作成と実行支援、シナリオプランニング、事業再生、組織改革などさまざまな支援を行っている。 ファイナンス 2019 Oct.63夏季職員トップセミナー 連載セミナー

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