ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
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という訴え方ではなくて、「それが社会に対してどんな意義があるのか。」を訴えていくことが重要だと言われています。社会の持続可能性というものに対して非常に鋭く問うてくる投資家なども出てくる中で、若い世代も「社会に対して良いことなのか。」「経済成長だけではダメではないか。」という考え方をしているのです。資本主義の根幹にある一つの考え方が揺らぎつつあり、社会の考え方も変わってきているところがあります。そこにAIとか情報量というものも含めて「人間のやるべき仕事とは何なのだろう。」という問いが投げかけられる傾向も出てきているのです。4.財務省の取組(1)財務省再生プロジェクトの取組では、3点目の大きなテーマである財務省再生プロジェクトの取組についてです。取組に当たって考えたのは、どこかで誰かがやっていることではなく、多くの方を巻き込んで皆のものとしていくことでした。図にあるとおり、6つの大きな取組(「組織理念の確認・共有」「コンプライアンスの確保」「人材育成」「働き方改革・業務効率化」「省外との双方向コミュニケーション向上」「省内コミュニケーション強化」)を含めて、究極的には「組織風土改革」を実現する取組を進めています。この6つは全て関連し合っていて、全部が同じように大切です。目指しているのは「組織風土改革」です。きっかけがコンプライアンスに関わることでしたので、「コンプライアンスの確保」というのが何より重要なことではあるのですが、ただルールを作る、仕組みを作るというだけでは「コンプライアンスの確保」はできません。これを作っても、それを守れないという行動をしないようにしていく。それは外からルールだけでやるのではなく、自分の中から湧き上がっていくようなもので実現していくことが重要なことだと思っています。不祥事が起こってしまい、それが繰り返されてしまう組織もあります。多くの場合、改革をするときの世代はすごく一生懸命で、非常に深く反省もしながら、次世代がこういうことを起こさないように、と思って改革をやっているのです。ただ、時間が経って、その後も取組を続けて残っているのは企画部門だけになってしまうことがあったりするように、その時だけの盛り上がりだったりすると、どうしてもまた再発してしまうのです。そういう時に社員が「あれは別部門がやったことでしょう。」とか「品質管理部門が分かっていながらおかしな製品を市場に出してしまったのでしょう。」という他人事のような態度ではダメなのです。「自分がもしその場にいたら、どういう判断ができるのか。」と自分に引き寄せて考えたときに、「自分だったらこういうふうにする。」と思えないと、また起きてしまう可能性があります。そのことも含め、相互に関連しているこの6つの取組を全部やっていくこ財務省再生プロジェクトの取組 ファイナンス 2019 Oct.61夏季職員トップセミナー 連載セミナー

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