ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
64/88

り方です。留意すべきは同じ人間でもいつも同じ象限にいるわけではなく、新しい仕事に就いたときは、元の職場で素晴らしい能力があった方でも、いくらか職務遂行能力が落ちたりすることもあるので、人間というのは、この4つの象限の中を行ったり来たりしていると考えて部下に向き合っていただくことではないでしょうか。もうひとつは、内的な満足に働きかけることです。若い方々から話を聞くと、「仕事を通して自分が成長できるということが嬉しい。」「やった仕事の達成感がある。」「相手に喜んでもらえることが生きがい。」など仕事の満足度に関する意見もよく出ます。厳しい仕事という職場の前提条件を変えるのは難しい中でも、やる気を引き出す、仕事の満足度を高めることはできると思います。今申し上げた成長や達成感もそうなのですけど、仕事の満足度を高める上で、予見可能性を高めるということも効果は大きいです。例えば、「この日は子供の誕生日なので早く帰ってやりたい。」とか「この週は次の週の重要会議に向けて山場が来る。」といった類のことも、お互いさまと職場の中で協力しあったり、あらかじめ共有しておいたりすることで予見できるような仕事の仕方にする。いつでもできるわけではありませんが、やってみてはいかがでしょうか。3.組織を取り巻く環境の変化では、2点目の大きなテーマである「組織を取り巻く環境の変化」に入ります。(1)リスクと不確実性が増大私たちの周りではいろいろ大きな変化が起きてきています。大きな変化はどんな時代でも常に起きているのですけれど、昨今の特徴は、リスクと不確実性の振れ幅が大きくなっていることです。私どもの研究所で調べたところ、1960年代、1990年代、2000年代において企業の時価総額の振れが世界的にどんどん大きくなってきています。優良企業が短い間に奈落の底に落ちるような業績になったりします。この振れ幅の大きさというのは、1つには経済活動のグローバル化によるものです。もう一つはテクノロジーの進化によるものです。予想ができないとことが多くなってきていると思います。不確実性増大の例として世界の情報貯蔵量の推移をお示しします。世界の情報貯蔵量は、1986年26.2億GBでした。これが2000年には54.5億GBになり、2007年には295億GBと急激に増大しているのです。トレンドで線を引いたのでは予想できない変化です。いきなりこうした激しい変化が現れるように、不確実性も増えているのです。(2)組織構成員にも変化が起きつつあるまた、世界の人材市場で組織構成員にも変化が起きつつあります。ミレニアル世代(1980~1994年頃生まれ)及びZ世代(1995~2010年頃生まれ)は、豊かな時代に生まれ育ったこともありますし、生まれたときからスマートフォンもデジタル機器も当たり前のように身近にあったと人たちであるということで、人とのつながり方とか仕事に対する考え方が上の世代とかなり違うと言われています。報酬水準というようなこと以上に「社会貢献したい」というようなことも一つの特徴だと言われています。働くにあたり「雇用主が『存在意義』を明確にしていること」「仕事に社会的な意義があること」を彼らは重視しています。「我が社はこんなに給料が多くて、利益を上げている会社です、新しい技術開発もどんどんやっていますよ。」メンバーとの働き方60 ファイナンス 2019 Oct.連載セミナー

元のページ  ../index.html#64

このブックを見る