ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
63/88

直して使っていたのです。そこで、全ての部門の成績が事業再生計画を上振れして達成した時に、約20年ぶりに新車のバスを1台買うことにしました。それだけでバス事業以外の仕事をしている社員も達成感が形になったようで大変喜びました。こういう類のこと、小さなことでよいので、目に見える形で達成感を演出するのもリーダーの仕事ではないかと思います。エ.改革を継続する組織改革に伴い、たくさんの施策を実施することになりますが、すぐに変化が起こる類のものばかりとは限りません。3年、5年と人材の異動があっても引き継いでじっくりやり抜くしかない、という類のこともあります。1、2年すると、そういうものを指して「あんなにいろいろやっているのに、全然変わらないよね。」と言い出す人が必ず出てきます。そこを乗り越えられるかどうかが、組織改革が成功するかの大きな分かれ目となるのです。改革慣れは組織改革を潰します。中途半端に何度もやるのではなく、一度やり始めたらやり抜くことができるかどうかがその組織の命運を握っていると言えるでしょう。・目に見える変化に心を配る改革を継続するには「目に目える変化」が重要になります。例えば、資金繰りが厳しく、全社としては、聖域なく費用の削減をしなければならなかった会社がありました。しかし、ひどく痛んでいた社員休憩所の畳は交換しました。これから変化が起こっていくこと、費用削減の中でも社員を大切にしていることは伝えたかったからです。3年、5年とやり抜かなければならないことがあるときに、少しずつでもよいので、社員が変革を実感することができるのは大切なことです。モノでなく優れた研修が増えることなどでも良いのです。・成功を定義し、振り返りを行う成功を定義するというのは、なかなか難しいところもあるのですが、いわば一里塚を作っていくようなものかもしれません。最後にみんなで目指したいゴールというのはありますが、その途中の節目節目でここはクリアしよう、というものがあると進展を実感できますし、軌道修正もできます。これは、社員が取り組みを継続するための一つの要素になると思っています。幹部は5年、10年といった長い時間、広い視野で改革の全体を見ることができますが、前線で頑張っている社員にはなかなか変化の全体像が見えないので、取り組みへの熱が冷めてしまうということもありますから、一里塚における成功を定義して、振り返りを行い、進捗を実感するということが大事なのです。(4)仕組みの実効性を高める工夫組織改革を進めていく上での仕組みとしては、「アクションプラン」「人事制度改革」「部門横断プロジェクト」といったものもありますが、仕組みを作るだけではなくて、実効性を高めるための工夫が大事です。例えば、「アクションプラン」については、作るだけではなく、定期的に必ず経営幹部が見直す。すると経営幹部から質問を受ける人たちが必ずそれより短いタイミングで部下に確認するという形になることで、目標必達のツールとなりえます。「人事制度改革」については、公平性や独自性に配慮することが重要です。評価と報酬を結び付けるのであれば、努力を支援するための研修が大事になります。また、評価と報酬が結びつくからこそ、評価者を研修することによって、良い評価ができる人になる、良い指導ができる人をつくることが大事であると考えています。「部門横断プロジェクト」については、組織には必ず縦割りの弊害がありますので多くの組織が取組むのですが、実利に結び付くテーマでないと、だんだんと形骸化していってしまう点に注意が必要です。(5)メンバーとの働き方先日、ある方から「厳しい仕事の中で部下を上手に使うにはどうしたらよいか。」という質問をいただきました。これについては、2つのことを申し上げています。まず、人のやる気に着目することが一つ目です。「やる気(高い、低い)」と「職務遂行能力(高い、低い)」を2つの軸とする4つの象限の中で考えて、やる気と職務遂行能力の両方が高い人には「権限委譲」、やる気はあるが、職務遂行能力があまりない場合には「教え導く」、その逆であれば「励ます」、どちらも低い場合は「指示する」というのがよくあるや ファイナンス 2019 Oct.59夏季職員トップセミナー 連載セミナー

元のページ  ../index.html#63

このブックを見る