ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
58/88

第二十二回 令和4年度予算編成ができない!?ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?観光や芸術祭、企業の挑戦や世界に羽ばたくといった明るい話題を紹介してきて、この刺激的なタイトル。なんと、人口222万人、県内総生産8.9兆円と大規模な都道府県に分類される新潟県の話なのです。少子高齢化・人口減少が続く中、輸出型の大企業が豊富でない自治体には決して無縁なことではありませんので、明るい未来を切り開くため、目を背けがちな事実をあえて紹介してみたいと思います。赤字が続いて貯金が枯渇へ新潟県の予算は、令和元年度予算で1.26兆円、赤字(収支不足)の見込みは▲212億円です。▲200億円台の赤字は今後も続く見込みで、平成30年度末の基金残高(収支不足に対応するための貯金)645億円は、令和4年度に底をつく(今から2年後に始まる令和4年度の予算編成で78億円歳入が足りないと頭を抱える恐れ)、という試算になっています(図1参照)。足りなければ借金すればいいじゃない?と疑問が湧くかもしれません。赤字を埋めることを特例法で認められている国と違って、地方自治体は原則公共事業の財源としてしか借金できないのです。だからこそ、財政状況の異なる約1800の地方自治体の格付けが一定水準に保たれ、借金できている、とも言える訳ですが。さらに、予算全体が1.26兆円で赤字が▲200億円ちょっと、2%弱だったらなんとかなりそう、と思われるかもしれません。しかし、歳出は、借金返済(一部の借換え含む)約3000億円、人件費約2400億円、他都道府県・市町村への地方消費税清算金・税交付金約1100億円など、義務的だったり右から左的な支出が多いのです。しかも、国と違って、多くの個別支出と収入(国の交付金・補助金)はセットになっています。例えば、3億円の事業を廃止しても、その事業に2億円の国支援があったとしたら、県の収支としては1億円しか改善したことにならないのです。このように、考えなしに事業費カットをやってしまうと、県経済にも悪影響が出かねません。ざっくり言うと、裁量的な経費で県の財源(一般財源と呼んでいます)から毎年度支出する額は、1000億円程度しかありません(県立病院支援、私学助成、商工団体補助金など)。これら事業を大幅に見直すか、どこからか資金を集めてくるか、仕事全般・組織をスリム化するか、生きる道がない訳です。相当厳しいですよね。このまま何もしないと、令和4年度編成の際に、産業や観光分野など、未来につながる削りやすい事業を前触れなく中止しなければならなくなるのです。なぜ赤字に?歳出面では、平成16年の中越大震災・平成19年の中越沖地震を中心とした大規模災害対応、可住地面積では北海道に次ぐ全国2位の広い県土・日本一長い信濃川等を有するが故のインフラ整備・維持管理等でかさんだ借金、高齢化による社会保障関係経費の増や、岩手県に次いで多い15の県立病院の繰出金(170億円程度)が多額に上るといった事由で歳出が高止まりしています。一方歳入は、税収(令和元年度2553億円)は、全国に比べて伸び率が低い状況が続いているなか、地方交付税(臨時財政対策債を含む。令和元年度2757億新潟県総務管理部長(元財務省広報室長)佐久間 寛道54 ファイナンス 2019 Oct.連載ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?

元のページ  ../index.html#58

このブックを見る