ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
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トを獲得できないため、若い学者は実態調査よりも理論を重視し、最近のアメリカの社会科学一般の傾向として、広く知識を得ようとするよりは、狭い分野で専門的な知識を深めようという傾向が強いという。日本研究のための奨学資金が少なくなり、博士課程の学生は授業料の高い大学院で時間をかけて日本語を勉強する余裕がなく、日本研究の蓄積により英語の文献も多く、日本語の書物をあまり読まずに議論するという。(2)他方、1987年にスタートした、総務省、文部科学省、外務省による語学指導などを行う外国青年事業(The Japan Exchange and Teaching Program,いわゆる「JETプログラム」は毎年数千人の外国人の青年を招くプログラムで、2007年には5500人の参加者のうち半分はアメリカ人だったという。このような「JET世代」とも呼べる新しい知日派が台頭していて、第二次大戦のときの陸海軍日本語学校に匹敵するほど多く、コロンビア大学で大学院に入って日本の勉強をする学生にはJET卒業者が多いという。米国の学者による日本研究の成果は学術・文化の世界のみにとどまらない。米政府が日本研究者の意見を求めることは勿論、「回転ドア」と言われる、アメリカの政権交代に伴う政府高官の交替により、ライシャワー駐日大使のように、政権の中枢に知日派が入ることもあり、他の国での日本研究以上に意義があることだという。しかし、1990年代のバブル崩壊後。米国人の日本の経済、政治への関心が薄れる中、日本研究をする人が少なくなっているという。そんな中でも最近、日本文化への関心を高めてきた人たちのご紹介、そして、今年、米国で日本文化への理解・関心のすそ野を広げる目的で開催されている「Japan2019」については、次号に譲る。(主な参考文献)外務省 外交青書2018年版ドナルド・キーン、「ドナルド・キーン著作集 第1巻~第15巻」、新潮社、2011年~2018年ドナルド・キーン「続 百代の過客 日記に見る日本人」、朝日新聞社、1988年ドナルド・キーン/河路由佳『ドナルド・キーン わたしの日本語修行』白水社、2014年ドナルド・キーン 松宮史朗訳「思い出の作家たち 谷崎・川端・三島・安部・司馬」新潮文庫、2019年東京新聞 2019年3月6日「ドナルド・キーンさんを悼む」ドナルド・キーン「かなえられた願いー日本人になること」国語六創造、光村図書出版、2014年M.C.ペリー、F.L.ホークス編纂、宮崎嘉子監訳「ペリー提督日本遠征記 上・下」、角川ソフィア文庫、2014年吉田光邦、「改定版 万国博覧会 技術文明史的に」NHKブックス 1985年伊藤真実子『明治日本と万国博覧会』吉川弘文館 2008年紫式部 アーサー・ウェイリー英語訳 佐藤秀樹日本語訳「ウェリー著 源氏物語Ⅰ-Ⅵ」 平凡社 2008年ルース・ベネディクト 長谷川松治訳「菊と刀」、講談社学術文庫、2005年エリセーエフ、赤露の人質日記、中公文庫、1976年クリストフ・マルケ、「雑誌『Japon et Extrême-Orient/日本と極東』と1920年代フランスにおける日本学の萌芽、クリストフ・マルケ、日仏会館創立90周年記念シンポジウム「両大戦間における日仏関係の新段階」」2014年倉田 保雄、「日本学の始祖エリセーエフ (私たちが生きた20世紀--全編書き下ろし362人の物語 ; -忘れえぬ人-」、文芸春秋 78(3)、2000年川口久雄、『涼しい眼光がとらえた日本 エリセーエフ『人質日記』、G,B.サンソム『日本文学史』』朝日ジャーナル、1977年小町恭士「巻頭随筆 ジャパノロジ―の誕生とエリセーエフ」、GAIKOFORUM2000-12、2000年The United States and Japan, Viking Press, 1965, 3rd ed. 『ライシャワーの見た日本』 徳間書店、1967年/徳間文庫、1991年Japan The Story of a Nation, C.E. Tuttle, 1978, 3rd ed. 『ライシャワーの日本史』 文藝春秋、1986年/講談社学術文庫、2001年『ライシャワー大使日録』 ハル夫人との共著、入江昭監修、講談社、1995年/講談社学術文庫、2003年エズラ・ヴォーゲル、訳者 広中和歌子/木本彰子「Japan as No.1」、TBSブリタニカ、1979年エズラ・ヴォーゲル 訳者 益尾知佐子、杉本孝「現代中国の父 鄧小平 上・下」、日本経済出版社、2013年エズラ・ヴォーゲル 平成経済の証言 1980年代に生じたおごり 長い停滞の引き金に 週刊東洋経済 2019.4.6ジェラルド・カーチス山岡清二・大野一訳、『代議士の誕生』、日経BPクラシックス, 2009年ジェラルド・カーチス『政治と秋刀魚――日本と暮らして四五年』、日経BP社, 2008年Website等外務省のWebsite https://www.mofa.go.jp/mofaj/国会図書館デジタルコレクションのWebsite http://dl.ndl.go.jp/国際交流基金のWebsite https://www.jpf.go.jp/j/about/area/japan2019/index.htmlhttps://japonismes.org/ジャポニスム2018 事業報告書https://www.jpf.go.jp/j/about/area/japonismes/pdf/japonismes2018_report.pdfフルブライトジャパンのWebsite https://www.fulbright.jp/JETプログラムのWebsite http://jetprogramme.org/ja/Russia BeyondのWebsie アレクサンドル・クラーノフhttps://jp.rbth.com/blogs/2014/07/24/4931138 ファイナンス 2019 Oct.ペリー来航以来の日米文化交流と「Japan2019」(上)SPOT

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