ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
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て、経営委員会は、年金積立金管理運用独立行政法人法に基づき平成29年10月に設立された委員会である。同法に基づき、経営委員会は、基本ポートフォリオ等の重要事項について意思決定を行うとともに、執行部の業務執行に対する監督を行う。経営委員会は、委員長並びに監査委員である経営委員及びそれ以外の委員8人以内並びに理事長で組織される。経営委員会の委員は、経済、金融、資産運用、経営管理その他の管理運用法人の業務に関連する分野に関する学識経験又は実務経験を有する者のうちから、厚生労働大臣が任命する。なお、委員の任期は5年(最初に任命される委員は2年半から4年半の3つに分けた任期を設定)とされる。また、個別法により、罰則付きで、管理運用法人の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、その職務上知ることができた秘密を漏らし、又は盗用してはならない、と規定されていることが目を引く。(2)地域経済活性化支援機構(REVIC)REVICは、平成20年秋以降の金融経済情勢の急速かつ大幅な悪化等を受けて、我が国の地域経済が低迷を余儀なくされる中、地域経済の再建を図るため、有用な経営資源を有しながら、過大な債務を負っている事業者の事業再生を支援することを目的に、「株式会社企業再生支援機構法」に基づき、当初、平成21年10月に株式会社企業再生支援機構として設立された。株式会社であり、基本的には、そのガバナンスの仕組みが活用されることが想定されているが、地域経済活性化支援委員会が設置法に基づき設置されている。地域経済活性化支援委員会は、主務大臣の認定を受けた「大規模な事業者」又は機構の取締役会から委任を受けた事業者に対する再生支援の決定・撤回、債権買取り、出資、保有債権等の処分、更には、事業再生・地域活性化ファンドに対する有限責任組合員としての出資等の決定を公正中立的な立場から最終的に判断する機関である。委員会は、取締役である委員3人以上7人以内で組織し、委員の過半数は社外取締役でなければならず、また、委員の中には代表取締役が1人以上含まれなければならない。なお、特別な利害関係を有する委員は、議決に加わることができない。また、地域経済活性化支援機構の役職員には、設置法には、収賄罪が規定されているほか、罰則付きで守秘義務が課されていることが目を引く。おわりに本稿は、「試論」とさせていただいたとおり、まだまだ、思慮・考察が浅いことは自認している。関係各位の叱咤激励を頂ければ幸いである。いただいた厳しいご指摘などを踏まえて、今後ますます重要となると思われる、官民の中間領域の在り方について、さらに考察を深めてまいりたい。また、前出の「多機関連携の行政学」の「終章」で、伊藤教授は、この分野の研究の課題として3点あげている。研究対象の拡大、多機関連携を促進又は阻害する要因の実証的な検出、国際比較を踏まえた実証研究の必要性である。そのうち、第3点目に関連して、以下のように指摘する。「日本の行政においては、関係機関間を規律する『制度』や会議体という『場』の果たす役割が諸外国と比べて相対的に大きい可能性があると推察される」というのだ。財務局や沖縄公庫の事例に鑑みても示唆深いと考える。まだまだ、発達途上の官民融合や多機関連携について、様々な関係者が関心をもって取り組み、実態調査や分析・考察が深まり、人口減少下の日本において、「持続可能性」を少しでも担保することになればと願って筆をおきたい。プロフィール渡部 晶(わたべ あきら)沖縄振興開発金融公庫副理事長1963年福島県生まれ。87年京都大学法学部卒、大蔵省(現財務省)に入省。福岡市総務企画局長、財務省地方課長兼財務総合政策研究所副所長、内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当)などを経て、17年6月から現職。「月刊コロンブス」(東方通信社)で書評コラムを掲載中。出身の福島県いわき市の応援大使を務める。 ファイナンス 2019 Oct.27人口減少社会における地域活性化に係る諸機関の連携とそのガバナンスについて(試論)~沖縄公庫の実践例を踏まえて SPOT

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