ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
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沖縄公庫は、平成30年度から事業資金(一部を除く)の協調融資実績をシステム登録している。同年度の協調融資実績(当公庫融資額)は、141件48,173百万円となった。また、民間金融機関との協調融資を一層促進するため、協調好事例の公表(個別協調融資案件の概要紹介)も行っている。加えて、民間金融機関との協調融資商品創設にも取り組んでいる。3個々の組織の「自由と規律」このような協調・連携は、一方で、いままで「官と民」で整然と分かれていたところに、中間領域(官民融合領域)が発生するということになる。これについて、「行政ビジネス」(稲継裕昭、山田賢一著 東洋経済新報社平成23年)が、「『それは民間の仕事で、行政が手を出すべきではない』。このような、伝統的な官民の役割分担論がある。行政は許認可や規制を行い、補助金を出すもので、民間は商品を作ったり、売り込んだりする、という考え方だ。しかしそれだけではもう、地域の課題を解決できないのは明らかだ。」とし、「自治体をはじめ、広く行政に求められているのは、なんだろうか。『民や民間企業と一緒になって、地域や社会の活力を生み出し、さまざまな課題を解決していくこと』ではないだろうか。そのためには、従来の行政手法やスタイルを革新していかなければならない。「恐竜博物館」など、福井県観光営業部の取組みを紹介しながら、挑戦する行政の姿を描く。」としていたことの先進性を再度想起したい。ただ、官民のお互いの規律が守った上、自由闊達に活動するといういわば二律背反的なところがそもそもあるわけだ。しかし、それができないのであれば、失敗事例が山積している過去の第三セクターを変わらないことになる。そのため、いわゆる「自由と規律」という古くて新しい課題に我々は果敢に取り組んでいく必要がある。「自由なき組織は硬直し、規律なき組織は崩壊する」という言葉がある。これは会社組織を想定していて、社員に自由さ闊達さがないと会社は伸びず、逆に社員が好き勝手で無規律になるとルーズな会社になって倒産につながるというものだが、われわれの直面しているジレンマをよく示していると感じる。1.沖縄公庫のガバナンス2で概観したような連携を行うためには、個々の職員の創造性・主体性のある取組が不可欠である一方、政府系金融機関としての公的な役割という守備範囲もある。この2つをどう調和させるかということが、なかなか難しいわけである。沖縄公庫では、役員会などのガバナンスを行うための各種の内部組織の活動、組織の運営方針や守るべきコンプライアンスの明確化、政策金融評価、1人1人の役職員が持つべき公庫職員としての行動指針の浸透などを通じて、このような困難な課題に対応しようとしている。まず、沖縄公庫法第17条は、「役員及び職員は、刑法(明治40年法律第45号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。」と規定することを確認したい。いわゆる「みなし公務員」規定である。この趣旨であるが、本条により、その職務について公務員と同一の責任を負担する一方、同一の保護が与えられていると解されている。なお、「刑罰その他の罰則」は、刑法のみを指すと解されており、国家公務員法の秘密漏えい罪などの適用はないとされる。ただし、金融機関の守秘義務を負っていると考えられ、それは、顧客との取引過程で取得した顧客に関する情報をみだりに第三者に開示しないという義務であり、法定化されていたものではなかったが、これまで各取引契約からその付随的・補充的義務として当然に負っている義務とされてきた。なお、個人情報保護法の法体系が近年整備・強化されており、これらの法律の規制を受けることは当然である。沖縄公庫には、直接的には、「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」が適用される。沖縄公庫では、保有する個人情報の適切な管理について必要な事項を定めた「個人情報保護宣言」を策定し、公表しているところである。(1)役員会沖縄公庫の業務運営に係る理事長の諮問機関として設置されている。原則毎月1回、役員が集まり、公庫の経営課題、業務状況などについて報告を受け、意見交換を行っている。沖縄公庫は、「業務運営方針」を毎年度策定し、業 ファイナンス 2019 Oct.21人口減少社会における地域活性化に係る諸機関の連携とそのガバナンスについて(試論)~沖縄公庫の実践例を踏まえて SPOT

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