ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
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とを前提に、「持続可能性」を考えていく必要があろう。また、都市部でも空き家問題が深刻化するほか、高齢者人口の急増への対処も喫緊の課題だ。2連携の重要性と現状私見では、人口が減少し、投資余力が低下した現在において、どうしても必要なのは、地域に存在する様々な主体による「連携」・「協働」・「協調」だと考える。地域にある希少な資源(人材も含む)をさまざまな課題解決に巻き込む。ここで、PPP(Public-Private-Partnership:パブリック・プライベート・パートナーシップ)といわれる考え方も登場する。行政主体による公共サービスを、行政と多様な構成主体との連携により提供していく考え方である。民間委託、PFI、指定管理者制度、民営化、地域協働、産学官連携等を含めた官民連携手法の総称である。また、ここで、「地域協働」とは、地域を構成する市民、町内会・自治会、NPO、企業等のさまざまな主体と、自治体が、地域課題や将来像などを共有して、それぞれの得意分野などを生かして、役割分担しながら地域が目指すまちづくりを進めていくことを指す。また、関連する多様な分野の行政機関の連携によって、行政サービスの質の向上を図る「多機関連携」(interagency collaboration)の取り組みも、すでにさまざまな政策領域で進んでいる。早くから「多機関連携」に着目し、「多機関連携の行政学―事例研究によるアプローチ」(有斐閣 平成31年2月)を編さんした、伊藤正次・首都大学東京大学院法学政治学研究科教授は、平成23年の論考「多重防御と多機関連携の可能性」(別冊アスティオン「『災後』の文明」掲載)で「効率的な行政をさらに追及するために改革の手を緩めてはならないが、人材も財源も細っていくことが予想されている状況の中では、自治・行政の抜本的な改革がかけ声倒れに終わってしまう可能性も否定できない。将来の課題解決に向けたエネルギーを蓄積するためにも、1990年代以降続いてきた自治・行政の改革の成果をいま一度検証したうえで、現場の知恵を結*2) 参照:拙稿「図書館・書店を拠点とした地域活性化への展望~日本における『サードプレイス』の可能性」(ファイナンス平成30年2月号)*3) 平成26事務年度に、地方課長をしていた担当者としての考えは、「環境会議・人間会議」(年4回発行 事業構想大学院大学出版部 平成28年)に連載した「地域連携で広がる未来(1)~(4)」、「地域活性化のための戦略と構想」(月刊事業構想 平成29年9月号)を参照されたい。*4) 財務局の地域活性化策については、地域栽培メディア「月刊コロンブス」(東方通信社)の連載「元気の出る地域連携塾」で紹介されている。令和元年9月号で、第48回目となる。この号では、関東財務局職員を中心としたメンバーからなる「若尾会」の協力を得て、富山県魚津市の事例が紹介されている。集し、手持ちの資源をフル活用して、眼前の課題を一つ一つこなしていくことが求められているのではないか」と指摘していた。なお、「多機関連携の行政学―事例研究によるアプローチ」が紹介する事例の中に、「公共図書館~『地域活性化の拠点』としての図書館と多機関連携」(嶋田暁文・九州大学大学院法学研究科教授・執筆)が掲載されている。わが意を得たりというところである*2。このような連携の中で、筆者がこれまでの業務の中で経験してきた、財務局と沖縄公庫の事例について概観したい。特に、現在在籍している沖縄公庫の事例を詳しく紹介してみたい。1.財務局の地域連携の取り組み財務局では、地域にとって真に必要な取組は何か、地域にどのように役立つことができるかなど、地域の課題を把握し、地域の皆様と財務省・金融庁をつなぐネットワークの結節点(ハブ)としての役割を果たすことにより、地域に貢献するよう努めている。このような財務局における取組は「全国財務局における地域連携」として平成26年度から取りまとめ公表されている*3。ファイナンスの本年3月号では、「地方創生イベント『ENGINE! 日本のミライと出会う場所』を開催」との記事が掲載されている。それによれば、財務省・財務局は、地域経済エコシステムの形成に向けた取組を推進しているとのことである。まさに、地域連携の発展とみることができる*4。2.沖縄公庫の他機関との連携(1)地方創生関係地方創生は、国の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」策定を経て、本格的な「事業展開」の段階に入っている。沖縄県および県内各市町村においても、国の総合戦略を踏まえて策定された「地方版総合戦略」を踏まえ、各地域におけるプロジェクトの推進や観光・商工・農林等の各分野における個別施策の取組が行わ18 ファイナンス 2019 Oct.SPOT

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