ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
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図1は、県内地域金融機関の地方公共団体との協働意識の3ヶ年推移をグラフ化したものであるが、総じて協働意識は向上していることが分かる。また図2は、地方公共団体との協働状況を、静岡県と東海3県(愛知県、岐阜県、三重県)の地域金融機関とで比較したものであるが、東海財務局管内において、県内地域金融機関の協働意識が高い取組みが多い結果となっている。静岡県では、地方創生に向けて「中核的役割を担う地方公共団体」と、「地域経済に多くの影響を与える地域金融機関」が積極的に協働し、取組みを推進できている傾向にあるといえよう。静岡県においても、人口減少・高齢化の進展等による構造的な問題などを背景に、地域金融機関の経営環境は厳しい状況が続いている。県内では、ここ1年間において3組の信用金庫について合併が行われ、平成31年1月に浜松磐田信用金庫、令和元年6月に島田掛川信用金庫、翌7月にしずおか焼津信用金庫が新たに発足することとなった。これらの合併は、各金庫が将来の地域環境を見据えた上で、各々が持つ営業基盤や経営資源を統合することにより、経営体質の強化を図り、地域の企業や住民に適切な金融サービスを提供することを目指す中で行われたものである。しずおか焼津信用金庫では、これまで以上に顧客の本業・生活に寄り添うビジネスモデルが必要との認識から、顧客との伴走体制強化に向けて、合併により生じた経営資源を活用して顧客サポートの専担部署の体制強化を図るとともに、サポートメニューの拡充等に向けて検討を進めているほか、人財育成にも力を入れていくとしている。島田掛川信用金庫では上記取組みなどのほか、地方創生の専担部署を新設して各市町等との連携強化を進めるほか、ハローワークと連携した人材確保支援の強化や、地元高校生による観光活性化に向けた施策の支援等にも取り組んでいくとしている。また、先行して合併した浜松磐田信用金庫でも、取引先企業や学校等に出向いてSDGsの啓発活動に注力するほか、創業・起業を支援する「イノベーションハブ拠点」を浜松中心市街地に設置をすべく準備を進めているところである。地域活性化、地方創生という課題の中で、地域経済に対して直接的にも間接的にもインパクトを与えうる、地域金融機関の果たす役割は非常に重要であり、地域からの期待も大きいものとなっている。各地域金融機関においては、それぞれの特性を活かして地域経済の発展に一層貢献していただくことを期待したい。当所としても、地域経済エコシステムの中で、財務事務所が持つ金融機関などの各主体とのネットワークを活用し、ハブ機能を十分発揮することにより、地域課題の解決を後押しし、地域活性化や地方創生に貢献してまいりたい。〔図1〕県内地域金融機関の地方公共団体との協働意識の推移平成29年度平成30年度令和元年度9080706050403020100(%)SDGsの達成に向けた取組の推進遊休資産(空き店舗、遊休農地、古民家等)の活用支援地域企業等の販路開拓支援(ビジネスマッチング・商談等)「生涯活躍のまち」の推進日本版DMOを核とする観光地域づくり・ブランドづくり推進調査対象:静岡県15金融機関(地域銀行4、信用金庫11)  ※平成29年度及び30年度は16金融機関(地域銀行4、信用金庫12)調査時点:平成29年7月1日、平成30年6月1日、令和元年6月1日 〔図2〕県内地域金融機関と東海3県との協働意識の比較調査対象:東海3県33金融機関(地域銀行8、信用金庫25)     静岡県15金融機関(地域銀行4、信用金庫11) 調査時点:令和元年6月1日 静岡県東海3県100806040200(%)SDGsの達成に向けた取組の推進遊休資産(空き店舗、遊休農地、古民家等)の活用支援地域企業等の販路開拓支援(ビジネスマッチング・商談等)「生涯活躍のまち」の推進日本版DMOを核とする観光地域づくり・ブランドづくり推進 ファイナンス 2019 Oct.15静岡県における地域活性化・地方創生への取組状況について SPOT

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