ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
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現在、全国の財務局において、地域経済エコシステム※を通じた様々な取組みが推進されており、静岡財務事務所においても、そのネットワークを活用して商工団体や地方公共団体と地域金融機関などをつなぐことにより、地域の課題解決に向けた取組みを行っている。本稿では、こうした取組みの状況についてご紹介するとともに、静岡県内における最近の地域金融機関の動きなどについても触れることとしたい。1プラットフォーム「金融懇談会」を 活用した地域活性化への取組み地方が抱える課題は中小企業者等の事業承継、人手不足、商店街の衰退など様々であるが、財務局では商工団体や市町村等を定期的に訪問し、こうした課題やニーズの把握に努めてきた。当所においても、所長が各先を訪問し、ヒアリングを行ってきたが、商工会への訪問の際、地域課題について地域金融機関と意見交換する場が欲しいとの要望が多く寄せられた。これまで、商工会と金融機関において、個別案件について連携することはあっても、地域課題の解決に向けて、商工会所管地域内の金融機関が集まり、意見交換を行う機会はなかなかなく、実際に金融機関と連携を図ることが有効な解決手段となり得る課題も見受けられた。そこで、当所のネットワークを活用し、ぜひそのような場を設けたいとする商工会所管地域内の民間金融機関や日本政策金融公庫等に参加を呼びかけ、プラットフォームとなる4つの金融懇談会を構築した。さらに、当所のこうした取組みに共感いただいた市からの要請により、市条例に基づき中小・小規模企業の振興を目的に設置され、商工会や金融機関も参加する円卓会議へ参加することとなった。金融機関との連携が有効であった課題の一例として挙げられるのが、ワンストップの経営相談窓口の設置である。当該取組みを通じて経営相談窓口の設置に至った商工会では、従前も職員による相談対応や専門家派遣などで対応してきたものの、人的な限りもあり、事業者の相談ニーズの掘り起こしを十分に行うことができず、多様化する相談に対して継続的な助言・支援につなげていくことが難しい状況にあった。このような課題に対し、金融懇談会や円卓会議において意見交換を重ねた結果、各地域の実情に応じたワンストップ経営相談窓口を設置するに至った。地域の金融機関が行政とも連携しながら定期的に持ち回りで行う体制を構築し、またある地域では定期的に専門家を配置し、相談対応を行っており、現在、それぞれの金融懇談会や円卓会議において、相談ニーズの掘り起こしや窓口の利活用等についてフォローアップに取り組んでいる。また、本年6月に発足した島田市商工会金融懇談会では、全国的な課題となっている事業承継について、重点的に取り組んでいるところである。発足のきっかけは、先に述べたヒアリングの際、商工会から、後継者の経営意欲の向上を図るため、承継者と後継者の双方が参加する意見交換会や、金融機関から知識やアドバイスを受けることができる勉強会など、後継者に新たな気づきを与える場を設けたいとの要望を受けたことにある。直近開催(令和元年9月)となった懇談会では、地域資源の有効活用の観点から、資源の一つである富士山静岡空港を会場とし、後継者及び後継予定者を対象に、事業承継セミナーとワークショップの2部形式で開催した。ワークショップでは、「自社の5年後を描静岡県における地域活性化・ 地方創生への取組状況について東海財務局静岡財務事務所 理財課長 水谷 有里※ ある地域において、企業、金融機関、地方自治体、政府機関などの各主体が、それぞれの役割を果たしつつ、相互補完関係を構築するとともに、地域外の経済主体等とも密接な関係を持ちながら、多面的に連携・共創してゆく関係 ファイナンス 2019 Oct.13SPOT

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