ファイナンス 2019年10月号 Vol.55 No.7
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令和3年3月31日までは税抜価格のみの表示も可能平成16年4月から、「値札」や「広告」などで消費者に価格を提示する場合には、消費税相当額を含む支払総額の表示を義務付ける「総額表示義務」が課せられている。これは、消費者が値札等を見れば「消費税相当額を含む支払総額」が一目で分かり、価格の比較が容易に出来るという、消費者の利便性に資するために設けられたものである。一方で平成26年及び今回の二度にわたる消費税率の引上げに際し、(1)円滑かつ適正な転嫁を実現する、(2)事業者による値札の貼り替え等の事務負担に配慮する、という観点から、総額表示義務の特例が設けられている。これにより、平成25年10月から令和3年3月末までの間に表示する商品の価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じていれば、総額表示(税込価格の表示)を必要としない。他方、消費者の利便性に配慮する観点から、令和3年3月31日までの間であっても、できるだけ速やかに、税込価格を表示するよう努めなければならないとされている。図表10●特例を適用した場合の認められる例△△スーパー●●●円(税抜き)△△スーパー●●●円(本体価格)△△スーパー●●●円(税抜価格)△△スーパー●●●円(本体)△△スーパー●●●円+税△△スーパー●●●円+消費税需要変動の平準化に向けた価格設定の柔軟化平成26年4月の消費税率引上げの際は、税率引上げ時に様々な物・サービスの価格が一斉に上昇し、引上げ前後に大きな駆け込み需要・反動減が発生した。この経験を踏まえ、政府において事業者による自由な価格設定が原則であることを再確認するガイドラインがとりまとめられた。例えば、いわゆる「消費税還元セール」は禁止されているが、消費税と直接関連しない宣伝・広告(「10月1日以降、2%値引きセール」など)は規制されないこと等を明確化している。小売事業者が自らの経営判断により値引きを行うことに法令上の制約はないが、事業者間の取引において、下請事業者等がしわ寄せを受けて、消費税率引上げ分が負担させられるような事態があってはならない。その点の対応についても、ガイドラインにおいて確認されている。適正な転嫁の確保消費費税転嫁対策特別措置法は、消費税率の引上げに当たって、小売事業者や下流の事業者が下請け事業者や上流の事業者に対し、消費税率引上げ分を減額するよう求めたり、利益提供を求めたりすることなどを禁止している(平成25年10月1日から令和3年3月31日までの措置)。今回の消費税率引上げに当たっても中小事業者等が消費税を価格へ転嫁しやすい環境を整備するため、消費税の転嫁拒否等の行為に対して、転嫁Gメンによる監視や関係機関による周知を厳格に行っていくことが、上記ガイドラインにおいて確認されている。どんな対策が講じられた?(3)価格設定・価格表示について ファイナンス 2019 Oct.9引上げの背景は? 使い道は? 影響緩和策は?消費税率の引上げについて特集

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