ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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ているようなものです。必要に応じてステイクホルダーに対して透明性あるアカウンタビリティを果たすためには、第三者委員会の設置も一つの方法ではありますが、その前にやることがあるでしょう、ということを申し上げたいのです。16.おわりに本日の話をまとめます。コーポレートガバナンス議論を実効性あるものとするためには、トップをも射程に置いた内部統制議論を確立することが重要です。その際、個人のresponsibility(履行責任)だけではなくて、組織人としてのアカウンタビリティ(結果、報告責任)が重いものとして理解されていることが、結果として、健全な組織体制の構築につながります。組織の命運は「統制環境」、そしてその中心は、トップの倫理感に尽きると言っても過言ではありません。意識改革と組織改革が健全に履行されているのかについての継続的なモニタリングと、見直しのための努力、そして新しい状況における新しい情報を得ていかなければいけないのです。どんな立派な決めごと、どんな立派な人員構成であっても、周りの環境が変わってくるために、機能不全、制度疲労が起きる場合があります。したがって、常に健全な、鋭敏な、感度の良い状況を保って臨む必要があり、それと同時に、必要があれば、外の目を入れて議論していく。こういったことが求められているのです。ご清聴ありがとうございました。講師略歴八田 進二(はった しんじ)青山学院大学名誉教授/大原大学院大学教授1949年愛知県出身。博士(プロフェッショナル会計学・青山学院大学)。慶應義塾大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了、慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得満期退学。駿河台大学経済学部教授、青山学院大学経営学部教授、同大学大学院会計プロフェッション研究科教授を経て、青山学院大学名誉教授。2018年4月、大原大学院大学会計研究科教授。他に、日本監査研究学会会長・日本内部統制研究学会会長・会計大学院協会理事長・金融庁企業会計審議会委員(内部統制部会長)等を歴任。著書に「不正最前線-これまでの不正、これからの不正」「会計。道草、寄り道、回り道」、「会計のいま、監査のいま、そして内部統制のいま」、「公認会計士倫理読本」ほか多数。 ファイナンス 2019 Sep.71職員トップセミナー 連載セミナー

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