ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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三者委員会というものを信用ないしは支持する立場にはありません。私自身、そういう立場ではありますが、弁護士の久保利英明先生からお誘いを受け、第三者委員会の報告書を勝手格付けするメンバーの一員として、5年前から活動しています。メンバーは9名で、5名が弁護士、2名が学者、他にメディア関係者等々が入っています。この9名のメンバーが勝手にAランクからFランクまで格付けするのです。大学の成績に例えるなら、Aは秀、Fは不可、単位が取れるのはDまでです。誰がいかなる格付けをしたか、というのも全てホームページで公開されています。この格付け委員会は、当初、3年の時限的な活動とするつもりでした。それくらいやって質の悪い報告書に釘を刺せば、全体として襟を正す報告になるだろうと思ったのです。しかしながら、今でも活動は続いています。というのも、第三者委員会報告書の格付けは強制力を持っているわけではないので、Fランクの格付けとなった場合でも、当該企業なり組織は痛くもかゆくもありません。「そのような厳しい評価をいただいたので襟を正して頑張ります。」と言って終わりです。メディアもある程度報道して、国民はそれ以上追及できないという状況であり、第三者委員会はとても大きな問題を今でも抱えていると考えています。毎月勤労統計調査等の不正に関する厚労省の第三者委員会報告についても格付けをしましたが、9名のメンバー全員がFを付けました。そもそも第三者性がないのに第三者委員会と称しているところからして問題なのです。4.内部統制とは何か冒頭申し上げましたように、我が国の内部統制議論というのはあくまでも不正の防止、これを契機に法制度上議論が始まりました。最もはっきりしているのは金融商品取引法の下における上場会社による内部統制報告制度です。これは会社が自らの責任において自社の内部統制の状況を有効か否か評価して、その評価結果を外部監査人が確認するという決算書の監査と同じ建付けとなっています。ほぼ、時を同じくして、この内部統制に関する考え方が会社法の中に規定されたことで、その後、独立行政法人通則法や地方自治法等の非営利組織にも導入されてきており、その評価については、外部の人がいない場合には監事が見届けるのです。そもそも内部統制とは何なのか。これについては、従来より、必ずしも統一的な議論ができていたわけではありません。そこで米国発の内部統制の統合的なフレームワークに関する議論が日本に導入されて、日本ではそれを踏まえて金融庁の企業会計審議会が内部統制部会を設置し2年かけて一連の内部統制の考え方を公表したのです。私は内部統制の研究もしていましたので、内部統制部会が設置された時に、その部会長を拝命して2年かけてこの基準を作ったという立場にあります。学術的、教科書的に定義をしますと、内部統制とは、「業務の有効性及び効率性」、「財務報告の信頼性」、「事業活動に関わる法令等の遵守(コンプライアンス)」そして「資産の保全」という4つの目的が達成されていることについての合理的保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行される一連のプロセスのことを言います。これを支える6つの基本的要素として、「統制環境」、「リスクの評価と対応」、「統制活動」、「情報と伝達」、「モニタリング(監視活動)」および「IT(情報技術)への対応」が挙げられます。先ほども申し上げたとおり、この考え方は日本独自のオリジナルではなく、既に20年近く前、米国で特に金融機関の不祥事が頻発した時に米国民間機関がこういった内部統制の研究の成果を公表したのです。これが全世界にグローバルスタンダードのような形で伝播し、日本でもこれを援用しながら、最新化し、かつ国内対応が可能なように少し修正を施したのです。内部統制の第一義的な目的は、その事業体・組織体が有効かつ効率的に本来の役割を達成することができる、そのために必要なシステムやプロセスであること、これを忘れてはならないのです。したがって、内部統制に不備があったり、課題があったりすると、まずこの点が達成されていないということから、経営がうまくいかないことと同義になるのです。つまり、内部統制対応というのは、まさに経営管理と同義だと言ってもおかしくないのです。 ファイナンス 2019 Sep.65職員トップセミナー 連載セミナー

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