ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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地理の教科書を著し、…あらゆる国民・人種について、知り尽くしたような人類学的考察を加えているにもかかわらず、本人は生涯で二度しかイングランドの外に出たことがなかったという事実だ。…二つ目は、モーティマー夫人の人生が、ヴィクトリア時代の不幸や災難の縮図のようだということだ」。因みに夫人は晩年、ロバに平泳ぎを教えようとして溺れさせたり、オウムを石鹸と水で洗って台所の火で乾かして死に至らしめたりという逸話を残している。編者曰く「わたしの彼女の作品に対する反応は、笑いから怒りへ、そして驚きから困惑へと変化した」と。同感である。モーティマー夫人には、異文化に対する偏見やさげすみはあるが、(カトリックに対するものを除き)悪意はないので、我々としては、結局のところ困惑するほかないのだ。困ったことに。ダイバーシティが重視されるグローバル化した現代社会であるが、もしかしたら読者諸兄姉の周辺にも、困惑を余儀なくされる御仁がおられるのではなかろうか。知ったかぶりをする者(筆者はその誹りを免れないことを自覚しているが…)は嗤えばいいし、悪意ある者には怒ればいいのだが、実体は思い込みに過ぎない「すべてを知り尽くしたような」考察を、視野狭窄的善意から熱心かつ断定的に説いてくださる御仁にはどう対処すればいいのか。愚考するに、敬して遠ざかるしかないように思う。敬遠である。「論語」の「鬼神を敬して遠ざく」とはすなわち神霊は遠くから崇敬すべきもので馴れ馴れしく近くによるべきでないという意味であろうが、上述の御仁に出会ったときは、とにかく敬意を持ったふりをして近くに寄らぬしかない。プロ野球のように宣告敬遠(宣告故意四球)の仕組みがあれば手間がかからなくていいようにも思えるのだが…。(注)本稿執筆中に、中耳炎と思われる症状で耳鼻咽喉科にかかったところ、脳の硬膜から髄液が漏れているとのことで、某大学病院に即日入院・翌日手術となりました。さらに後日談を言えば、手術後原因不明の高熱が続き、各種検査を経て別の病気が見つかりまして、2か月間入院しました。現在も通院治療中です。読者諸兄姉におかれてもご自愛を。〈材料〉 豚赤身挽肉(又は牛豚合挽肉)400g、キムチ(市販品)、きゅうり2本(千切りし、塩少々と酢を振って軽く混ぜる)、長ねぎ(10cmみじん切り、5cm小口切り)、味噌(大匙4)、砂糖(大匙4)、一味唐辛子(小匙1)、粉山椒(小匙2)、おろしにんにく(小匙1)、おろし生姜(小匙2)、酒100cc、ごま油、麺つゆ(市販品)、そうめん(1)フライパンに胡麻油大匙1を引き、挽肉を入れ、中火でざっとほぐしながら、酒を加え、かたまりができないようよくほぐしながら炒める。(2)ほぐれたら、長ねぎ(みじん切り)、味噌、砂糖、一味唐辛子、粉山椒、おろしにんにく、おろし生姜を加え、弱火にし、かき混ぜながら加熱して少し汁けが残る程度になったら火を止める。(3)大き目の鍋にたっぷり湯を沸かし、そうめんを規定時間通り茹で、ざるにあげ、流水でよく洗って、氷水に放つ。(4)そうめんをざるにあげて水を切り、丼に分けて、きゅうり、キムチ、肉味噌をのせ、小口切りした長ねぎを振る。(5)よく混ぜて食す。好みで、麺つゆ少量を振る。* そうめんをさっぱりと食べたいときは、本文中に登場するもずくそうめんがおすすめ。茹でて水切りしたそうめんを丼に入れ、麺つゆをかけ、醤油とレモン果汁で味付けしたもずくをたっぷりのせ、刻んだ茗荷とおろししょうがで食べる。肉味噌・キムチそうめんのレシピ(4人分) ファイナンス 2019 Sep.63新々 私の週末料理日記 その33連載私の週末 料理日記

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