ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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考えられる)。国別で見ても表3のように、輸出先としての中国は、ラオスやミャンマーで輸出の30%台を占め、輸入先としてもブルネイ、カンボジア、ミャンマーで30%台となっている。また、タイやベトナム等では、ASEAN域内からの輸入よりも、中国からの輸入に頼る傾向が見て取れる。一方で、中国側からの目線では、中国はASEANのうち、特に近年ベトナムからの輸入を大きく増やしている。また、直接投資で見ると、ASEANの対内直接投資額(フロー)に占めるASEAN域内からの投資の割合は、2010年以降、毎年20%前後で推移している。その一方で、図3のようにASEANが中国大陸及び香港から受け入れた直接投資額は、2010年の64億ドルから2018年には203億ドルと約3.2倍に膨らんでおり、金額的にはASEAN域内からの投資額に近づいている。直接投資は年によって数値のブレが大きいことから、表4として、各国の対内直接投資額に占める中国大陸及び香港からの割合を、過去9年の平均値としてまとめた。香港経由の投資には中資系企業以外からのものも含まれるため割り引いて考えなければならないが、一般には大陸と関係の難しい国への投資の場合に、香港が利用される傾向があるとも言われる。国別でみると、カンボジア、ラオス、ミャンマーと、メコンの後発ASEAN国で大陸からの直接投資の割合が高くなっている。また、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムでは、大陸よりも香港からの投資の方が多いことがわかる。近年の動きを見ると特に、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、タイといった国で、大陸・香港からの直接投資額が大きく伸びている。このように過去10年間で、ASEANから見る中国は、より近くに、より大きく見える存在に変化してい表3 ASEAN各国の貿易の「ASEAN域内+中国」向け割合(2018年、%)輸出輸入域内中国10+1域内中国10+1ブルネイ28.13.631.732.439.471.8カンボジア5.98.114.040.034.574.5インドネシア23.415.138.523.923.747.6ラオス51.933.585.468.821.290.0マレーシア28.613.942.528.922.651.5ミャンマー25.033.158.144.632.076.6フィリピン16.012.928.925.019.644.6シンガポール29.512.341.821.213.434.6タイ27.112.039.118.220.138.3ベトナム10.417.327.713.728.342.0ASEAN 全体24.214.038.222.020.942.9(注)は域内よりも中国との割合の方が高い部分。(出所)IMFから作成表4  ASEAN各国の対内直接投資額に占める中国大陸及び香港からの割合(2010~18年の平均値、%)中国大陸香港中国大陸+香港ブルネイ0.026.226.2カンボジア24.79.233.9インドネシア4.73.68.3ラオス61.41.563.0マレーシア4.210.915.1ミャンマー21.36.027.4フィリピン0.76.26.9シンガポール6.63.29.8タイ4.68.312.9ベトナム5.37.412.7ASEAN全体6.55.111.6(出所)ASEANから作成図3 中国及び香港からASEANへの直接投資額(フロー)250(億米ドル)0501001502002010(出所)ASEANから作成中国大陸香港642032018201720162015201420132012201150 ファイナンス 2019 Sep.連載海外 ウォッチャー

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