ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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業間の貿易取引の決済を、米ドル建てからタイバーツ建てに変更するよう検討した企業もあるようだ。タイでは成長率が2018年の5%台から足元では3%を下回る水準に落ちており、中国からの生産移管先や代替投資地になることがpositiveに働くとの事前の予想とはやや異なる結果になっている。インドネシアとタイでは本年前半に選挙が行われたが、その間、大型のインフラ投資プロジェクトに対して、外資企業や投資家の一部が様子見の姿勢に転じたことが言われており、そうした影響も考えられる。ベトナムやマレーシアでは、現時点では成長率の数字自体には大きな変化は見られない。ベトナムの場合には、輸出製品の30%以上を国内の韓国系企業が生産しているといった特殊性もある。米中摩擦を受けて、中国にある工場での生産をベトナム等の工場に移す動きや、若しくは新たにASEANに工場を作る動きもあるようだが、各地企業等から話を聞く限りでは、部材の調達国(企業)は簡単に変えられるものではなさそうだ。なお、マレーシアを含めいくつかの国地域では、輸出以上に輸入の伸び率が落ちており、純輸出の寄与の要素で、見た目の成長率が保たれている可能性もありそうだ。また、中国からの輸出ルートや生産移管を考える上では、台湾企業の動きもカギになる。中国からの輸出額ランキングでは毎年上位10社中、半数近くを台湾図1 アジア各国地域の実質GDP成長率(2018年以降四半期別(前年同期比))8.1 5.0 7.56.86.55.15.35.03.24.601234567892018年1Q2Q3Q4Q2019年1Q2Qベトナム中国フィリピンインドネシアインドマレーシア台湾タイ香港シンガポール(%)(出所)各国統計6.76.25.55.14.44.91.82.42.30.60.1表2 アジア各国地域の輸出の伸び率(2018年以降四半期別(前年同期比))20182019ピークからの 最大下落幅1Q2Q3Q4Q1Q2Q中国13.7%11.5%11.7%3.9%1.3%-1.0%-14.7%香港4.8%4.2%4.2%0.6%-3.8%-8.5%-13.4%台湾10.6%11.2%3.0%0.1%-4.2%-2.6%-15.4%シンガポール9.6%14.6%12.1%6.3%-2.7%-6.2%-20.8%マレーシア19.4%18.8%9.2%7.6%-4.8%-4.2%-24.2%タイ12.2%11.2%3.0%2.0%-2.1%-3.8%-15.9%インドネシア8.8%11.3%8.5%-0.7%-8.3%-9.1%-20.4%フィリピン-5.5%-1.3%1.5%-2.1%3.6%3.8%(増加)ベトナム25.1%9.6%14.3%6.6%5.5%6.3%-19.6%インド5.6%14.7%9.7%4.7%5.6%0.0%-14.7%日本13.9%9.4%2.4%1.4%-8.6%-6.6%-22.5%韓国9.8%3.1%1.7%7.7%-8.5%-8.6%-18.4%(出所)WTOから作成48 ファイナンス 2019 Sep.連載海外 ウォッチャー

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