ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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足元の相場動向・足元、10年国債利回りがマイナス圏に沈むなか、相対的に利回りが高いREITが投資家の注目を集め、再編期待や日銀による買い支えの安心感も相まって国内外の資金が流入している。国内REITの値動きを示す東証REIT指数は、2019年7月にリーマンショック前の2007年以来およそ11年半ぶりの高値をつけた(図表7)。・ピーク時には10%近くまで上昇していた分配金利回りは、近年REIT投資口価格の上昇を受けて4%弱の水準にあるものの、依然として日本株式の配当利回りや国債利回りを大幅に超過している(図表8)。・前回REIT指数が高値を付けた2007年は不動産市場が“ミニバブル”と呼ばれていたが、当時と比べると割高感は乏しい。時価総額がREITの純資産の何倍かを示すNAV倍率は6月末時点で1.11倍と10年平均とほぼ同じ水準にあり、過度に加熱している状況でもなさそうだ(図表9)。図表7 東証REIT用途別指数の推移05010015020025030010111213141516171819(2010/3=100)東証REIT指数住宅オフィス商業・物流等図表8 株式・国債との利回り比較02468101219181716151413121110090807060504(%)東証REIT指数分配金利回り3.82%2.57%▲0.16%TOPIX配当利回り10年国債利回り(注)記載利回りは2019年6月末時点図表9 NAV倍率の長期推移0.60.811.21.41.67777777777111111111120192018201720162015201420132012201120102009(倍)NAV倍率(10年間)10年平均今後の展望・J-REITは堅調な価格推移をみせているものの、米国や豪州等の他先進国と比較してみると、価格指数の伸び幅は依然として緩やかである(図表10)。・また、J-REITの主要投資地域である東京では五輪開催に向け交通インフラの整備などが進み、都市としての機能の高度化が見込まれている。実際、過去に先進国で開催された五輪では、開催前だけでなく、開催後も住宅価格の上昇が見られており、引き続き首都圏の不動産相場は堅調に推移することが見込まれる(図表11)。・また足下、J-REIT市場に再編機運が高まっている。J-REITは二極化が進んでおり、日銀の買い入れ対象となるような時価総額の大きい銘柄に資金が集中し価格が割高になる一方、小型銘柄は割安に放置される傾向にある(図表12)。今後は小型REITを中心に、規模拡大等を企図した再編が進む可能性がある。図表10 海外REITとの比較501001502002503003500910111213141516171819(2009/1=100)日本米国豪州英国図表11 オリンピック後の不動産価格事例ロンドン上昇上昇シドニー502502001501000506070809101112131415161718(2005/7=100)5030025020015010093949596979899000102030405(1993/4-6=100)2012年7月大会開催2000年9月大会開催図表12 時価総額/NAV倍率分布図(注)2019/7/23時点02,0004,0006,0008,00010,00012,0001.6(倍)0.60.811.21.4(億円)時価総額上位10社割高割安時価総額下位10社(出典)一般社団法人投資信託協会、一般社団法人不動産証券化協会、日本銀行、ABS(オーストラリア統計局)、Bloombergデータを基に当課作成 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2019 Sep.45コラム 経済トレンド 63連載経済 トレンド

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