ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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4条協議ミッションは大体2週間程度続き、週末を2回挟む場合は、前半の週末は観光に、後半の週末は仕事に充てることが多かったです。もちろん観光費用は個人負担となりますが、ホテルの中でパソコンと向き合っているだけでは、見えてこない世界があります。観光を通じてその国の社会歴史文化に触れ、現地の人々と交流したりすることでその国のことをより知ることができ、時に仕事に活かされることもあります。例えば、国際機関の支援で以前作られた道路に多くの凹凸が生じているのを見て、財政当局とインフラの維持管理費について議論するきっかけとなりました。ソロモン諸島の首都ホニアラが所在するガダルカナル島は第二次世界大戦中に日米の決戦の舞台となった所であり、補給路が断たれ多くの餓死者を出したことから、ガ島(餓島)と呼ばれた所です。ソロモン諸島は観光地としては、あまり知られていませんが、沈んだ戦艦や輸送船の周辺でのスキューバダイビングを経験できるツアーや日米両方の慰霊碑・当時の戦車戦闘機等が見られる博物館等を案内してくれる戦跡ツアーがあり、私は上司や同僚と戦跡ツアーに参加しました。放置された戦車に木の根っこが絡まり、年月の経過を感じさせるもの、米国の慰霊碑が当時の戦況を詳細に記しているのに対して、日本の慰霊碑では、慰霊の言葉が添えられているだけというそのコントラストがとても印象に残っています。また、地元の人の案内により、日本兵と思われる遺骨が見つかった場所にも行きました。つい昨年も、遺骨収集団が収容したご遺骨が、海上自衛隊護衛艦により帰還し、厚生労働省に引き渡された後、千鳥ヶ淵戦没者墓苑に埋葬されるとのことでした。ガダルカナル島での戦いから、すでに77年以上経過していますが、当時の爪痕はまだ残されているのです。IMFの上司・同僚と日本の慰霊碑の前で(筆者一番左)現地の人が集めた兵器やヘルメット等(筆者撮影)バヌアツは観光地ということもあり、首都ポートビラにあるエファテ島を一周するツアーや、バンジージャンプ発祥の地ペンテコスト島で行われるランドダイビングの儀式を見学するツアー等様々なものがありましたが、私はエファテ島から小型機で1時間ほどのタンナ島にあるヤスール火山を見に行くツアーに同僚と参加しました。ヤスール山の標高は361メートルと低く、世界で一番火口に近づける活火山として知られているようですが、当然日本なら立ち入り禁止区域に指定されていることでしょう。バヌアツ基準でレベル3(Minor Eruption)以上になった場合(現在の火山活動はレベル2(Major Unrest))は、立ち入り禁止の措置をとっているようですが、レベル2から3に変わるような噴火を予測することは誰もできず、ちょっとした恐怖心から噴火がある度に思わず身構えてしまったものです。ただ、間近で見る(もう二度とないと思いますが)噴火活動は迫力満点でした。ヤスール火山の噴火の様子(筆者撮影)<コラム>ミッション中の週末の過ごし方40 ファイナンス 2019 Sep.南の島担当IMFエコノミストとして勤務して SPOT

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