ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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基づき設立された国際機関で、ワシントンD.C.に本部があります。日本は1952年に加盟、2019年8月時点の加盟国は189カ国になります。ちなみに、一番直近に加盟した国はナウル(2016年加盟)です。主な業務としては、(1)対外的な支払い困難(外貨不足)に陥った加盟国に対する金融支援、(2)世界・地域・加盟国の経済・金融情勢のモニタリング及び加盟国の経済政策に関する助言の提供(サーベイランス)、(3)加盟国の政策遂行能力を高めるための技術支援、があります。以下では私が関与した(2)の国別サーベイランスについて説明したいと思います。3.2 4条協議とは国別サーベイランスでは、各加盟国の経済政策に関する包括的な協議の形で定期的に(通常は年1回)実施されますが、このような年次協議は、IMF協定の第4条に規定されていることから4条協議(Article IV consultation)と呼ばれています。4条協議の出張のことを、Article IVミッション、またミッションのヘッドのことをミッションチーフと呼んでいます。4条協議のプロセスはミッションの2ヶ月くらい前から準備が本格化し、それまでに当局が公表した資料・経済指標や報道等から、セクター毎のエクセルファイルを更新し、チームメンバーとの議論を踏まえ、経済財政見通しや政策提言案を含むPolicy Note(PN)を作成していくことになります。ミッションの1ヶ月前くらいには、PNをIMFの他局に送付し、他局のレビュー担当者も参加するPCM(Policy Consultation Meeting)を開催し、PNの内容や本ミッションの着眼点等について議論を行います。他局からのコメントを反映したPNをIMFマネジメントに送付し、ミッション開始1週間前位までには彼らの了解を取り付けることになります。ミッション中は、当該国政府及び中央銀行のみならず、他の国際機関、豪州・NZ・JICAといったドナー、国有銀行、民間金融機関、年金基金、NGO等と議論を重ね、経済見通しや政策提言の修正の必要性についてチーム内で議論を行います。島嶼国の場合、現地に行って初めて得られる情報も多いため、ミッション中に経済見通しが変わったり、政策提言のトーンが変わったりすることもあります。最終的には、ミッションの主な調査結果を文書にまとめ、財務大臣や中銀総裁も参加するConcluding Meetingでそれに対する当局の正式な見解を伺うことになります。その日の夜は当局主催の夕食会が開催され、翌日の午前中は現地のプレス向けに当該国の経済財政等の状況についてIMFの見解を説明した後、質疑応答を行い、全てが終わってから午後の飛行機便でワシントンへの帰路に就くことが多かったです。帰国後は、Sta Reportと呼ばれる年次報告書を作成します。年次報告書には、経済財政金融の現状、政策提言、当局の見解、各セクターの指標に加え、トピック的にコラムや政策提言の根拠となる深い分析を記したアネックス(付属書類)も含まれます。また債務の持続可能性分析(DSA, Debt Sustainability Analysis)については世界銀行と共同で行うこととなっているため、IMFで作成したDSAの報告書案に対する世界銀行のコメントも反映した上で最終化します。年次報告書及びDSA報告書を基にIMF理事会で議論が行われ、4条協議が終了します。通常帰国してから2ヶ月以内に理事会が開催され、理事会終了後速やかに報告書がIMFのホームページに掲載されます。チームによって異なりますが、私のいたチームでは、通常4条協議が無事に終了したことを祝って、リサーチアシスタントを含むチーム全員でランチに行くことが多かったです。IMF理事会が開催される部屋(筆者撮影)4IMFエコノミストの仕事一般的にIMFエコノミストは、国内総生産やインフレ率等を扱うリアルセクター、国際収支を扱う対外セクター、財政セクター、金融セクター及びDSAのうちどれか1つを担当することになりますが、島嶼国の場合は、ミッションチーフを入れて3人程度で見て ファイナンス 2019 Sep.37南の島担当IMFエコノミストとして勤務して SPOT

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